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圧倒的な市場規模を誇る、中国の藻類産業

圧倒的な市場規模を誇る、中国の藻類産業

日本や欧米では、サプリメントや化粧品をはじめとした微細藻類由来の商品が市場を拡大し、様々な情報が日々飛び交っている。それに比べ、中国における藻類生産現場の情報を目にすることは非常に少ない。

そこで本日は、中国における藻類産業をまとめた報告を紹介する。

中国におけるスピルリナ生産(Chen et al. 2016)

中国におけるスピルリナの商業生産は1991年にShenzhen Lanzao Biotech Corporationによって初めて行われた。現在は、中国国内において、計750ha以上の生産設備で年間9,600トンのスピルリナ粉末が生産されていると見られている。また、これは年間売上6億5,000万USドル相当であると見積もられている。(つまり、中国の生産現場におけるスピルリナの年平均生産性は約13トン /haであり、生産されたスピルリナ粉末は1キロあたり約70 USドルで販売されていることになる。) また、この中国におけるスピルリナ生産量は世界総生産量の約3分の2にあたり、その大半が中国国内で消費されている。現在、中国におけるスピルリナの生産量は年間約10%の伸びを見せ続けている。

中国で生産されるスピルリナのほぼ全てが、パドルホイールを利用したレースウェイポンドを利用しているが、北部の内モンゴル地区では (ここでは年間約3,000トンのスピルリナが生産されている)、レースウェイポンドは屋外ではなく、温室内に設置されている。それでも北部の地方では、5~10月の期間にのみ生産が行われることが多い。

2004年のLiangらによる報告(Liang et al. 2004)によると、“中国におけるスピルリナ生産は1996年に1,000トンに達した”と、あることから、1996年から2012年の間に中国におけるスピルリナ生産量は約10倍に増加したことになる。また、2004年のPulzらの報告(Pulz and Gross 2004)によると、2004年時の “世界の微細藻類バイオマス生産量は約5,000トン、市場規模は年12.5億ドル程度” とあるので、それと比しても非常に大きな数字であることがわかる。

中国におけるクロレラ生産(Chen et al. 2016)

クロレラの生産においても、中国は日本を抜き、世界最大の生産国になりつつある。しかし、その生産量はスピルリナの4分の1程度であると見積もられている。主な原因は、その培養の難しさにある。クロレラの培養はスピルリナの培養に比べて、コンタミネーションによる培養破綻の可能性がはるかに高いこと、および収穫に遠心分離を必要とするためである。そのため、通常クロレラの価格はスピルリナより高い。スピルリナ生産者が、その培養設備の一部を利用してクロレラを小規模に生産するケースが多い。

ドナリエラおよびヘマトコッカス等についても少し記述があるが、詳細についてほとんど触れられていないため、ここでは割愛する。

 

欧米では諸国の藻類ベンチャーの華々しい活躍が、日本では藻類バイオ燃料やミドリムシの話題が注目されがちだ。しかし、中国が水産養殖生産量世界一なのと同様、世界における藻類生産は既に、そして圧倒的に、中国を中心に回っているのかもしれない。


引用元:
・Chen, Jun, John Benemann, Jun Chen, Yan Wang, John R Benemann, Xuecheng Zhang, and Hongjun Hu. 2016. “Microalgal Industry in China : Challenges and Prospects.” Journal of Applied Phycology 28 (2): 715–25. doi:10.1007/s10811-015-0720-4.

参考資料:
・Liang, Shizhong, Xueming Liu, Feng Chen, and Zijian Chen. 2004. “Current Microalgal Health Food R & D Activities in China.”
Hydrobiologia 512: 45–48.
・Pulz, Otto, and Wolfgang Gross. 2004. “Valuable Products from Biotechnology of Microalgae.” Applied Microbiology and Biotechnology 65 (6): 635–48. doi:10.1007/s00253-004-1647-x.

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この記事を書いた人

ちとせ研究所所属。東京大学農学部卒業後、アリゾナ大学生物システム工学科にて博士号を取得。その後同大学にて微細藻類バイオマス大量生産を目的としたフォトバイオリアクターの開発・研究に携わる。2015年、13年間の米国生活からとうとう帰国し、真面目に社会人化。光合成でモノをどんどん増やすことに興味のあるアンパンマンに憧れる中年。

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