Modia[藻ディア]

藻類ビジネスとスピルリナの情報サイト

休耕田は藻類燃料生産の救世主になるのか?-農地の潜在能力と課題-

休耕田は藻類燃料生産の救世主になるのか?-農地の潜在能力と課題-

農閑期の農地の活用、休耕田の活用は各地で行われています。Modiaにも、休耕期間中の農地で藻類生産をすることへのご質問をいただきました。

昨今の温暖化問題の深刻化を懸念しており、ネットを読んでいて藻ディアに行きつきました。

まずは身近なところか、藻類のエネルギー利用を普及できないか、と考え、質問させていただきたく、メールいたします。

藻類からオイルを抽出するステップを踏まずに、乾燥させただけの段階で燃料として使用することは、現実的でしょうか?世の中には、自家発電の規模では、薪ストーブで発電するケースもあるようです。

【イメージ】

 ・農家が休耕期間中に水田で藻を育成

 ・農閑期に納屋等で藻を乾燥させる

 ・小規模な発電装置で自家発電して利用

今回は、回答を皆さまにもご紹介します。

藻類燃料の特徴

薪と藻類(微細藻類)のと燃焼用材料としての特徴を比較をします。どちらもCO2を吸収して蓄えるので、これを燃やせばカーボンニュートラルなエネルギーになります。

薪は水分量が10%で、得られるエネルギーは4780kcal/kgです。また燃焼後の灰分は1%と非常に少ないです。薪はもともと乾燥していて、主成分がセルロースをはじめとする炭水化物が約99%なので、燃焼に良い材料です。平均樹齢40年の直径20cmの杉1本は約400kgなので、木を一本倒せば400㎏の薪が入手できることになります。

一方で水中で生育する藻類は収穫時に水分量は90%以上です。水分含量10%まで乾燥させた藻類のエネルギーは3000-3500kcal/kg、燃焼後の灰分は5-20%となります。一般的な藻類は炭水化物が10%前後、タンパク質が50%以上と高く、燃焼するとエネルギーは得られますが、異臭がする、灰分も多くなることが予想されます。そこで、藻類の燃料利用には、エネルギー効率の高い脂質の割合が高い藻類種を選択し、藻体から脂質を抽出する事が必要です。また、乾燥した藻類を手軽に入手することは非常に難しいです。

田圃の藻類生産の潜在能力と問題点

文献を基に、5月の水田(富栄養の水質、イネが成長していないので水面に光が届く期間)で微細藻類のバイオマス量を計算したところ、乾燥重量2g /m²/dayでした。一般的な水田1区画50a(5000m²)で取れる藻類は乾燥重量10kg/dayになります。水田の藻類バイオマス量の潜在能力は軽視できない大きさになることが予想されます。

しかし、現実問題として、水田からの藻類の回収手段がありません。基本的に藻類は何かしらに付着して増殖、もしくは土底付近で増殖をするため、土との分離は今の技術的に不可能だと考えられます。また、乾燥手段も問題です。簡単な微細藻類回収手段が確立されたとしても、先の例なら50aの水田の1回の収穫時には水分を含んでいるので100kg以上になります。100㎏の水分を含んだ藻類を自然乾燥させるには薄く伸ばす必要がありますが、厚さ0.5cmと分厚くても20m²の広げる面積が必要になります。乾燥器を使う場合、エネルギーをかけてエネルギー源を確保するという矛盾が生じかねません。

休耕期間中の田圃の藻類生産

これを踏まえて、農閑期に藻類を培養して納屋で乾燥させる案が現実的なのかというご質問にお答えします。

まず水田の休耕期間は冬です。この気温が低い期間は、藻類の増殖は見込めないです。実際に冬にたまたま水がはってあった水田を観察したことはありますが、そこの土ばかりが目立ち、顕微鏡でみても藻類はほとんどいない状況でした。仮に、低温下で高増殖する藻類がいたとしても、前述の通り水田から藻類だけを回収するのは非常に困難です。技術的に回収方法が確立しても、乾燥方法も前述の通り問題になってくると思います。したがって、日本において、また技術的に現在のところは現実的ではないと考えます。

藻類技術は成長期

藻類技術は農業や林業に比べると研究の歴史は浅く発展途上にあり、培養生産、収穫、乾燥、抽出など規模も含めて既存の手法には技術的に、価格的に敵わないです。しかし、樹齢40年の木1本のエネルギー量は、培養面積50aの水田だけで約40日培養した藻類のエネルギー量と同じです。藻類専用の培養装置を使えばもっとエネルギー生産量は効率よくなります。この藻類エネルギー量を活用できる技術を開発することが、ちとせグループや世界中の研究者・技術者の役割だと思います。

温暖化の原因の一つが化石燃料によるCO2大量放出と言われていますが、エネルギー枯渇の問題の抜本的な解決には、エネルギー生産量を増やすことが望まれます。藻類をエネルギーとして活用できるまでには藻類の技術開発とともに、藻類の魅力を伝え(代替エネルギーの他、代替タンパク質としても注目を集めています)、藻類の認知度を向上させる事が欠かせません。

藻類の活用を広めていくためにも、現在藻類産業の中心である藻類食品に目を留めていただき、藻類技術開発を応援していただければ幸いです(ちとせグループの宣伝になってしまい恐縮ですが、グループ会社のタベルモでは、タンパク質危機を解決を目標に、藻類スピルリナの大量培養技術開発、販売を行っております。)。

<参考文献>
The Asian Biomass Handbook(The Japan Institute of Energy)
YAMAGISHI, T., WATANABE, J., OKADA, K., HAYASHI, T., KUMURA, A., & MURATA, Y. (1980). Cycling of Carbon in a Paddy Field: II. Biomass and gross production of algae. Japanese Journal of Crop Science, 49(1), 146-155.
Ghayal, M. S., & Pandya, M. T. (2013). Microalgae biomass: a renewable source of energy. Energy Procedia, 32, 242-250.
Becker, E. W. (2007). Micro-algae as a source of protein. Biotechnology advances, 25(2), 207-210.
http://www.eonet.ne.jp/~forest-energy/GREEN%20ENERGY%20FILE/weight.htm
http://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/pdf/18/bull1801.pdf
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/soshiki/soshiki07-shigen/01shigen/pdf/sekkeitohyouka/huzoku-1.pdf
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h22_h/trend/part1/chap2/c7_01_05.html#:~:text=%EF%BC%882%EF%BC%89%E6%B0%B4%E7%94%B0%E3%81%AE%E5%8C%BA%E7%94%BB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6&text=%E6%98%AD%E5%92%8C30%20%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E5%BE%8C%E5%8D%8A%E4%BB%A5%E9%99%8D,%E3%81%8C%E6%A8%99%E6%BA%96%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/10.html

この記事を書いた人

ちとせグループ、Modia編集部。学生時に藻に一目惚れ。それ以降、色々な視点で藻を見続けるために東邦大学、東京大学、筑波大学を渡り歩いて博士号を取得。三度の飯より藻を観察するのが好き。もっと多くの人に藻の生き物としての面白さを知ってもらいたいと、国内外で非公式に活動中。藻愛なら誰にも負けないと自負している。『生まれ変わったら渦鞭毛藻になりたい!!』との周囲ドン引きの格言を放った生粋の藻ガール。

SHARE