年末にホットなニュースが飛び込んできた。米国の次の農業法の中に『藻類』が正式に組み込まれることとなったのだ。この新しい農業法は12月11日に上院、12日に下院でそれぞれ可決され、20日にトランプ大統領の承認と署名を経て成立した。今後5年間の農業支出の後ろ盾となる農業法だが、2019年から2023年までの5年間の予算総額は428ビリオンドル(≒48兆円)と、インパクトは大きい。

Trump Signs 2018 Farm Bill As USDA Aims To Increase SNAP Work Requirements

President Trump signed the farm bill today at 4 p.m. without SNAP work requirement changes and has proposed the changes through the USDA. The proposal, released this morning, seeks to have all Able-Bodied Adults Without Dependents ( ) ages 18-49 on SNAP placed into work programs, promoting the idea of ‘productivity’ over ‘poverty.’


なお、現在の農業法は、2014年2月に承認された法案で『The Agricultural Act of 2014』と呼ばれているものである。現行農業法は2018年で失効するので、今年中に次の農業法を可決する必要があったわけだが、ギリチョンセーフといったところだろう。

今回の新しい農業法に藻類が組み入れられることで、どのようなメリットが享受できるようになるかを以下にまとめてみた。

● 作物保険の適用が可能に (Crop Insurance)
藻類が『農産物』の定義に加えられたため、作物保険の対象となる。これにより、他の農作物と同様に藻類生産が不作の場合、生産者は補償を受けられるようになる。

● 藻類農業研究プログラムの設立 (Algae Agriculture Research Program)
USDA(United States Department of Agriculture:アメリカ合衆国農務省)傘下に『農業規模(大規模)の藻類生産』および『藻類農業に関する開発支援』を行うための藻類研究開発プログラムが新たに設立される。これによりUSDA経由でも藻類研究に予算がつき、技術開発が加速することになるだろう。

● バイオマス作物援助プログラムの適用 (Biomass Crop Assistance Program)
BCAP(Biomass Crop Assistance Program)が適用されるようになり、藻類生産に取り組む生産者に対して、栽培設備、生産、輸送などでかかる費用の一部がインセンティブとしてUSDAから支払われる。

Biomass Crop Assistance Program – National Sustainable Agriculture Coalition

Promoting the cultivation of biomass for bioenergy production Growing sustainable biomass (plant material, vegetation, and agricultural waste) for renewable energy production can be a win-win for farmers and our country as a whole. Thanks to the Biomass Crop Assistance Program (BCAP), farmers are able to receive funding to offset some of the cost of experimenting …


※BCAPは、農家がバイオエネルギー原料(エネルギーに変換するのに適した作物)を栽培し、加工工場まで運搬する際のインセンティブを与えるためのプログラムとなる。農家はUSDAと5年間(木質バイオマスの場合は15年間)の契約を締結し、BCAPから以下の支払いが行われる。
・エネルギー作物栽培に対するインセンティブ(金額はUSDAによって決められる)
・エネルギー作物栽培にかかる初期投資に対するインセンティブ(栽培設備費用の50%。1エーカーあたり500ドルを超えないこと)
・エネルギー作物の収穫、工場への輸送、保管に関わる費用の補助

● バイオベース市場プログラムに関する検討(Biobased Markets Program(BioPreferred))
BioPreferredプログラムの一環として、生物的にリサイクルされた二酸化炭素(バイオガスなどが想定か)から作られたバイオベース製品(藻類が対象と考えられる)にも十分なクレジットを与えるような方法論の策定がUSDAに指示された。現在の方法ではリサイクルされた二酸化炭素によって作られたバイオベース製品はBioPreferredの対象となっていないため。藻類由来の製品もバイオベース製品として認証させていくための動きと予測される。

BioPreferred

The Program is experiencing some stakeholder service impacts as a result of the expiration of the 2014 Farm Bill. Inquiry response times may take longer than usual for biobased product certification applications that require clarification. We appreciate your understanding of this situation at this time.


※BioPreferredプログラムは、バイオベース製品*の開発、購入、利用の増加を通して、経済発展の促進、新しい雇用を創出、農産物の新しい市場創出を目的としている。プログラムの柱は以下の2点である。
・連邦政府機関およびその請負業者のバイオベース製品購入義務制度
・バイオベース製品普及のためのラベル認証制度
*バイオベース製品には、潤滑剤、洗浄製品、インク、肥料、バイオプラスチックなどの現在109の製品カテゴリーがある。なお、食品、動物飼料、燃料は含まれない。

● バイオリファイナリー支援(9003ローン保証)プログラムの適用(Biorefinery Assistance (9003 Loan Guarantee) Program)
再生可能化学物質およびバイオベース製品の製造のための藻類およびその他のバイオリファイナリーのプロジェクトについて、バイオ燃料の生産の有無にかかわらず、9003ローンの適用対象として含める。

DSIRE

DSIRE is the most comprehensive source of information on incentives and policies that support renewables and energy efficiency in the United States. Established in 1995, DSIRE is operated by the N.C. Clean Energy Technology Center at N.C. State University and is funded by the U.S. Department of Energy.


※Biorefinery Assistant Programは商業規模のバイオリファイナリーまたはバイオ燃料の開発、建設、改築に融資を行うためのプログラムとなる。最大貸付金額はプロジェクト費用の80%または2億5,000万ドルとなっている。融資期間は20年またはプロジェクトの耐用年数のいずれか早い方。料金は固定または変動の利子、手数料は%保証および貸付金額によって異なる。

● 炭素捕獲と利用(Carbon Capture and Use)
USDAでのCCU(Carbon Capture and Use)に関する研究、教育、活動を拡大するための規定の追加する。

これらの内容を見る限り、ABO(Algae Biomass Organization)のロビー活動は大成功をおさめた、と言えそうだ。米国は藻類農業の発展に向けて全面的に支援していく姿勢である、と見て良いだろう。藻類が次世代の『農産物』として明確に定義されたことは、藻類のポテンシャルが認められたことでもある。

農業化による税制面での優遇、保険の適用、各種支援プログラムの適用が決まったことで、これまで藻類とは縁遠かった分野からも新規参入を考える人々が増加することになり、米国において藻類の産業化の流れが加速していくことは間違いない。研究開発についても【SEC.7209 High-Priority Research and Extension】に藻類が加えられており、これまではDOE(United States Department of Energy:アメリカ合衆国エネルギー省)が中心となって予算をつけて来た藻類研究にUSDAも本格的に参画してくることになる。

ほんの数年前までは限られた研究者の小さなバブルでしかなかった藻類が、時代の流れを受けながら次世代の『農産物』として農業法に記載されるところまで来たのは、米国の話とはいえ感慨深い。政治が動けばお金も動くわけで、お金が動けば人も動き、人が動けば産業も生まれる。産学官が相互に絡み合いながら、徐々に産業が前進していく様子をリアルタイムで追えているのは幸運なことだ。農業法が成立した後、どのような動きが出てくるか引き続き注視して行きたい。