以前、オーストラリアのクイーンズランド州が藻類農場の建設をサポートする取り組みを紹介したが、今回も同国の藻類産業への取り組みを紹介したい。

オーストラリア東南部のニューサウスウェールズ州(NSW)は、2017年7月にUniversity of Technology Sydney(UTS)内にあるDeep Green Biotech Hub での取り組みに6百万豪ドル(約5.2億円:1豪ドル=87円換算)の追加投資をすることを決めた。

Deep Green Biotech Hubは、藻類に特化したバイオテクノロジーの発展を推し進めるためのハブ機関であり、オーストラリア政府がBoosting Business Innovation Programを通じて支援してきた80以上のプロジェクトの一つで、2016年7月に州の11大学とCSIRO (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation) が連携して設立された。これまでに18百万豪ドル(約15.7億円)が投入されているが、そこへの追加投資となる。

NSW州の副首相兼中小企業大臣であるJohn Barilaroは
「藻類は非常に大きな可能性を秘めています。Deep Green Biotech Hubの設立は、藻類研究とバイオテクノロジーの専門知識へのアクセス、新しい商業製品とサービスの研究開発支援のためのインフラ及び製造施設を提供し、産業化を促進していくでしょう。」
「今回の600万ドルの追加投資は、Deep Green Biotech Hubやその他の機関が2020年以降まで活動を継続していくことに役立つだろう。」
と述べている。

また、Deep Green Biotech HubのプロジェクトリーダーであるUTS気候変動クラスターのディレクターPeter Ralph教授は、
「藻類の新しい業界に入ろうとするパートナーは、参入時に多額のインフラ建設が必要という大きな障壁にぶつかります。しかし、この施設を使えば、多額なインフラ投資をせずに試験が可能です。今回の新しい資金提供により、藻類に興味を持つ中小企業に対して、概念実証製品を開発するための3〜6ヶ月の試験期間とその間の資金を提供できます。」
「藻類産業は新しい雇用を生み出し、規模やインフラ状況に合わせて地方でも都市でも産業化させることができます。」
と語っている。

両者ともに、今回の追加投資が短期的な見返りを求めたものではなく、知識の集積や雇用の拡大など、藻類産業の長期的な構築を見据えていることがわかる。

また、同じような藻類研究のハブとしては、米国の『ATP3』と呼ばれる施設がある。

このような藻類研究に関するハブをつくり、そこに研究者、中小企業、新興企業、学生を集めて、交流を生み出す。業界を作るということは、こういう交流の場を生みながら、優秀な人材を呼び込み、育てていくことに他ならない。

今回のNSW州のDeep Green Biotech Hubの取り組みは、これから発展する藻類産業のポテンシャルを踏まえた上で、人材の育成も含めた業界を作っていくための長期的な取り組みの一端であるといえよう。先日のクイーンズランド州での藻類農業の取り組みも含めて、オーストラリアの藻類産業確立への本気度を感じる記事である。

米国やオーストラリアは自国に広い土地があり、かつ藻類培養に適した気候である、というのが大きなドライビングフォースになっているとはいえ、彼らのような長期的な産業構築の視点をもった戦略を日本も真似していきたいところだ。