先日藻ディアで公開された記事に、内モンゴルの砂漠地帯「オルドス市」のスピルリナ生産に関するものがあった。記事内では、砂漠に位置するにも関わらず、スピルリナの生産・商品開発・販売すべてを同地で行うことで、オルドス市が”世界の藻都”として注目されていることが紹介されていた。

一方、同じ砂漠地域とはいえ、オルドス市と緯度や経度のまったく異なるイスラエルにおいても、藻類生産が進んでいる。
Is 2016 the year of algae?

今回は、同国における藻類生産について考察していきたい。

過酷な環境であったからこそ、築かれた農業技術

イスラエルは、国土の60%が乾燥・半乾燥地域でありながら、食糧自給率は90%を上回っている。その高い食糧自給率の背景には、水の有効活用がある。例えば、下水処理水のリサイクル率は、2位のスペインが12%(日本は2%)である中で、イスラエルは83%であり世界1位を誇っている。また、同国で普及している点滴灌漑は、プラスチック製のパイプを通して必要な場所だけに水を届けることで、蒸発を抑制し利用効率を倍増させている。さらに、この水に肥料や農薬を入れることで、散布をより効率的に行っている。近年では、最先端のIoTやクラウド技術を導入し、あらゆる場所からの管理を可能とする農地も増えている。

このように技術を結集させて過酷な砂漠地帯で農業生産を行う同国だが、藻類産業にも力を入れている。

砂漠地帯における藻類生産

1988年に設立されたAlgatechnologies社は、微細藻類を商業的に培養することを専門とするイスラエルのバイオテクノロジー企業だ。同社は、微細藻類の中でも、Haematococcus pluvialis由来のアスタキサンチンを生産している。このアスタキサンチンを商品化した AstaPure®は、栄養補助食品、化粧品、機能性食品/飲料として利用されている。こうした藻類生産を”持続的”に行うために同社は、使用した水の8割を再利用することや、太陽光発電により電気を生み出すことで、限りある資源を効率良く利用している。また、溶媒を使用しない超臨界を用いたアスタキサンチンの生産も行っている。

また、日本企業も藻類生産を目的にイスラエルに進出している。岐阜県を拠点とする日健総本社はイスラエルに現地法人を立ち上げ、カロテノイドを豊富に含む藻類であるドナリエラ(Dunaliella salina)を生産している。ドナリエラは、塩分濃度が海水の約10倍と言われるイスラエルの死海で採取されている。生産が行われる環境下で採取されるため、別の環境に生息する藻類を砂漠で生産するよりも、環境に適しており培養に最適だと思われる。

農業への利用が難しい砂漠において藻類培養を行うには、限りある水や電力を有効に利用する技術基盤はもちろんのこと、強い太陽光や高い気温に適応することが可能な株を見出す技術、また過酷な環境下においても藻類生産が可能となるような高度な栽培技術が必要である。

現在、世界の乾燥地帯では、砂漠化が進行することにより、生活基盤の悪化、環境難民の発生、都市への人口集中などの影響が出ている。こうした現象は乾燥地帯だけの問題ではなく、食糧自給率の低い日本にも、砂漠化による食糧生産の減少によって、食生活に影響を受ける可能性がある。今回取り上げたイスラエルの事例のように、過酷な環境でも適応可能な、効率性を維持した「農業生産」が世界で広がっていくことで、砂漠化による負の影響が少しでも解消することを願う。