老若男女問わず、日本人に大人気の牡蠣。1999年に全国初のオイスターバーが誕生して以来、オイスターバーは増加を辿り、牡蠣を楽しめる場所が広がっている。今回はそんな牡蠣と藻にまつわる話を紹介したい。

Belgian algae producer on the verge of oyster industry debut in Asia, US

ベルギーのTomAlgae社がアジアの牡蠣養殖業者に向けた藻類生産を間もなく開始するようだ。当社のCEOであるWilliam van der Riet氏は、今はアジアのどの国かは明言できないが、9月には明らかになるだろう、と述べている。

TomAlgae社は2013年に設立された、藻類による水産飼料生産に特化したベルギー発の藻類ベンチャーだ。15年に英Benchmark Holdings社に買収された後、現在はその傘下で活動している。メインの事業は、フリーズドライを用いた水産餌量の開発であり、商品のラインナップも豊富である。その中でも、” Thalapure Mollusca”と呼ばれるフリーズドライで調整された藻類は、牡蠣の稚貝生産における藻類培養の手間を省くことができ、牡蠣産業への進出の大きな一歩になるかもしれない。

そもそも、甲殻類・貝類の幼生期は非常に小さく、餌として植物プランクトンしか食べることができない。そのため、稚貝生産において藻類培養は欠かせないが、安定した培養を実現するのは難しい。培養の安定性は稚貝生産に直接影響を与えるため、極めて重大だ。今回のテーマである牡蠣の稚貝生産においても、幼生期の最初の1-2ヶ月は藻類を食べて成長するため、生産者の多くは自前で藻類を培養し、生餌として与えている。当社はここにビジネスチャンスがあると注目しているのだ。

また、TomAlgae社はアジアとは別に、来年の秋にはアメリカでも上市を計画している。米国の東海岸ではこの5年で牡蠣の生産量が2倍に増えているとのことで、こうした需要を見越した上での計画であろう。加えて、ワシントンの牡蠣養殖の巨大企業であるTaylor Shellfish社への協業が狙いにあると推測される。同社がフリーズドライされた藻類の製品に関心を示すかは不明だが、広報部長であるBill Dewey氏は、確かに藻類供給が牡蠣生産の主要なテーマであることを認めている。

こうした中、フリーズドライ製品が生餌と同等の栄養をもたらすことができれば、生産者が藻類培養に関わる手間を減らすことにつながり、水産養殖業界において画期的な商品となる可能性がある。また、新規参入を目指す生産者にとっても、初期段階で本業に注力することができ、メリットが大きいと考えれられる。

ただ、フリーズドライでは製法にかかるコストが乗る分、生餌よりは原価が上がることが予測される。この原価の差を、保存性の向上・軽量化による利便性と輸送コストの低下で解消できるかどうか、まさにこの点のトレードオフが事業成立可否を決めるポイントになっていくであろう。

ちなみに日本では、「オイスターバー」を全国展開し2015年に上場したゼネラル・オイスター社の子会社であるジーオー・ファーム社が、昨年から沖縄の久米島にて海洋深層水を使用した陸上完全養殖に挑戦している。

国内外問わず、藻類が重要な役割を果たす甲殻類・貝類の養殖業界におけるトレンドを今後も引き続き注視していきたい。加えて、牡蠣の旬な時期まで後3か月近く、今年も首を長くして待ちたい。


画像引用
オーイシ –  岩牡蠣の浜焼き今期初@MANDO(20 June 2012) / CC by 2.0