今年に入って特定の藻類に注目した記事を書く機会が多かったのですが(Modiaが発行しているニュースレターでも、毎月一種の藻類を特集しています!)、今回は対象を広げて、藻類全体が食品分野で注目される理由と直面している課題についてまとめていきます。

そもそも藻類は、光合成によって光エネルギーを取り込み、それを細胞が利用できる形に変換してエネルギーを蓄えます。窒素、リン、カリウム、ミネラルといった無機物を取り込み、タンパク質等を生成しながら成長し、分裂して、増殖していきます。取り込み過ぎたエネルギーは脂質で貯蔵することもあります*。光合成も、物質の生成反応も、すべて1つの細胞で行うことができるため、藻類は様々な物質を生産できる「生体装置」ということができます。
*脂質については『油にまつわる言葉の整理 第1回 -油、脂質、脂肪とは-』こちらの連載もご覧ください。

食品としての藻類

藻類全体の栄養素組成を見てみると、まず第一に、生体装置の本質である「タンパク質」の含有量が高いことが挙げられます。また、光合成によって得られたエネルギーの貯蔵や、細胞を支える繊維構造として「炭水化物」も重要な役割を果たしています。藻類の種類や培養条件によっては、不飽和脂肪酸などの「脂質」も蓄積することが可能です。さらに、こうした栄養素に加え、人体にとって必要な「ビタミン」や「ミネラル」も含まれているため、藻類は古くから健康食品として世界中で利用されています。

動物実験や臨床試験では、藻類の健康への効果が幅広く検証されています。例えば、ガン細胞の増殖抑制効果、アレルギー反応の抑制効果、免疫機能の促進、肝臓機能の向上などです。日常的に藻類を摂取することで、腸内環境の改善や生活習慣病の改善も期待できるといわれています。

上記のように様々な効果が検証される中、近年では健康志向の高まりもあり、『藻活』と呼ばれる藻類を積極的に食べる習慣も広がってきています。

藻類の栄養素組成

食用として利用されている、または研究開発が進行中の藻類の栄養素組成 / 筆者作成

 

上図は、現在食用として利用されている、もしくは食用として研究開発が進んでいる藻類とその組成を示しています。

食品として現在利用されている藻類は、スピルリナ、クロレラを筆頭に、ドナリエラ、ユーグレナ、アファニゾメノン(ブルーグリーンアルジ)等があります。これらの藻類はタンパク質源とミネラル・ビタミンが豊富であるという観点から、藻類をそのまま乾燥粉末にして利用されています。

また脂質組成が特徴的なナンノクロロプシスは、不飽和脂肪酸EPA含有率の高いことを売りに同じく乾燥粉末にして利用されています。この他にもヘマトコッカスは抗酸化作用の強い赤色色素アスタキサンチンを抽出して健康食品の材料として利用されています(詳しくは下記ページをご覧ください)。


さらに上記以外でも、現在飼料用途として流通している藻類や、食品として有望視され研究段階にある藻類も多数います。

ちなみに、我々が普段口にする主要な食材(肉、米、大豆)にも、独自の栄養素組成があります(上図参照)。食品として利用されている、もしくは食品として研究されている藻類の組成は、主要な食材に似ていることがわかります。そのため、代替食材として藻類の可能性が高いと言えます。

タンパク質源として注目されている藻類

基本的に細胞分裂をして増殖している藻類は、タンパク質含有率が50‐75%であり、タンパク質源として有望視されています。栄養価も高く、藻類の食品利用はもっと進んでいてもいいと考えられますが、実際は多くが健康食品としての販売に留まっています。なぜでしょうか?

藻類が我々の食卓に並ぶまでに至っていない理由の第一の要因は、多くの藻類食品の形態が「乾燥粉末」であることです。藻類の多くは生存時はきれいな緑色で臭くありません。ところが、流通形態である藻類の乾燥粉末は、深い緑色と魚臭いことが原因となって食品利用の妨げになっているといわれています。そのため、藻類が食品として利用される際は、色や臭いの気にならないカプセルや錠剤の形態をとる健康食品分野がほとんどになっている*のです。
*最近では、健康食品以外にも、パンやパスタ等に藻類乾燥物を混ぜて利用されたりもしています。しかし、色は茶色に変化してしまい、味も変わり、おいしいとはいえる物ではありません(Becker 2007)

次に、生産側の問題があります。藻類バイオマスの生産コストは、肉や大豆をはじめとした従来のタンパク質の生産コストに比べて高過ぎます。そのため、藻類を「タンパク質源」として人々が捉えるにはまだ時間がかかるかもしれません。しかし、近い将来、タンパク質危機は必ず訪れるといわれています*。そろそろ、「タンパク質源」として、藻類を改めて見直す必要があるのではないでしょうか?
*タンパク質危機については下記記事も参照ください

藻類の持つ栄養については近年メディアでも度々取り上げられ、人々の関心が高まっていると感じています。今後、藻類が健康食品に留まることなく”食品”として当たり前のように人々の食卓に並ぶようになるためには、「食べやすさ」が鍵になってくるのではないかと思います。

このModia内で特定の商品を批評することは避けたいのですが、ちとせグループの商品である生スピルリナ「タベルモ」は、味やにおいが極めて薄く(個人的には「ない」といっても過言ではないです)、多くの食材に使用することが可能です。藻類食品業界に新しい印象をもたらしてくれると思っています。

今後、藻類がどのような形で”食品”として人々に浸透していくか、藻を研究し続けてきた身としても非常に楽しみにしています。


参考資料
・Becker, E. W. (2007). Micro-algae as a source of protein. Biotechnology advances, 25(2), 207-210.
・Chacón‐Lee, T. L., & González‐Mariño, G. E. (2010). Microalgae for “healthy” foods—possibilities and challenges. Comprehensive reviews in food science and food safety, 9(6), 655-675.
・尾張智美(2016). “生スピルリナの研究開発とタベルモ事業の挑戦”. 生物工学会誌, 95(2), 100-102.