先日、米国で藻類に特化したカリキュラムが作成されたコミュニティーカレッジで、初めての卒業者が誕生した、とのニュースを見かけた。アメリカのエネルギー省DOE(United States Department of Energy)のサポートによって設立されたATEC(Algae Technology Educational Consortium) によって作成されたプログラムを修了すると準学士(Associate Applied Science Degree in Controlled Environment Agriculture with a certificate in Algae Cultivation)がもらえる仕組みとなっている。

ATECは大学教授、藻類企業のリーダー、NREL(National Renewable Energy Lab)などのメンバーから構成されている。カリキュラムの中には藻類企業からの知見も取り入れられており、卒業生達が会社でも即戦力として働けるような知識の提供とトレーニングとが行われているそうだ。スポンサーであるDOEの立場からみると、せっかく藻類関連の補助金を出しても研究者が藻類を扱えるようになるまでの時間で大半が溶けてしまっている部分の改善に期待しているようだ。補助金の費用対効果を考えると理にかなった取り組みだなと感じる。

A First-of-a-Kind Algal-based College Certificate Program Sends Off Its First Graduates

A First-of-a-Kind Algal-based College Certificate Program Sends Off Its First Graduates

上記のプログラムは大人向けのものであるが、ATECでは子供向けのプログラムも作って、出張授業という形で展開させている。このプログラムはAlgae Academy K-12 STEM Initiatve と呼ばれるもので、12才前後の生徒達を対象としたものだ。カリフォルニア、ミシガン、オハイオの3州で先行して始まり、すでに現在までに5,000人の生徒たちがこのプログラムを受講している。ATECではこの取り組みを6州(カリフォルニア、ミシガン、オハイオ、メーン、ニューメキシコ、テキサス)に広げ、2018年中に20,000人の生徒へ展開させようとしている。

The Algae Foundation

In 2015, the Algae Foundation launched its new K-12 Algae STEM Initiative to educate and excite students on the power of algae as a sustainable solution for several of the dilemmas facing our global community. Algae production will significantly reduce greenhouse gases, provide a sustainable source of biomass for food, and lead the path to homegrown commercial biofuels.

藻類は教育素材として間口広く利用できるものなので、どちらのプログラムも日本でも是非真似して取り入れていきたい取り組みだ。とはいえ、日本で声をあげたとしても『そんなカリキュラム修了しても就職先がないじゃん』と言われることだろう。確かに現状では就職先も少ないし、そもそも藻類なんて勉強して何の役に立つのか、とすら思われるかもしれない。けれども、ここで私はあえて声を大きくして言いたい。藻類は教育に取り込まれるべき題材であり、皆さんも今から藻類について知っておいて損はないですよ、と。なぜなら藻類には明るい未来が待っていると考えているからだ。今回はなぜ私がそこまで藻類産業の未来が明るいと言いきれるのかについて、マクロの視点から少し説明してみたい。

現在、我々の身の回りにあるものの多くは、スーパー、コンビニ、ホームセンターなどで日々買ってるものだ。これら我々が日々購入している製品の産業構造をさかのぼっていくと「販売」→「加工」→「生産」という順番を通って、最終的な原材料として『化石資源』もしくは『植物資源』へとたどり着く。以下の図は、とりあえず私が日頃購入している食品や日常品(大抵は網羅されていると思うが)を分類し、それをベースに書いてみたものだ。これを下から上へと向かって見ていただければ理解しやすいかと思う。

光合成を原点としてみた産業構造/筆者作成

この図をみると、現在の産業の多くは過去の光合成産物である『化石資源』と現在の光合成産物である『植物資源』を原材料とし、それらを様々な製品に加工して流通させることで成り立っていることがわかる。この産業の流れを体系立って捉える際、原材料に近い側を川上、我々消費者に近い方を川下と川の流れに例えることが多いが、確かに水のイメージで捉えるとわかりやすい。さらにいえば、これら産業という川は、『光合成』という雨が集まってできている。例えるならば、植物資源は湧き水、化石資源は雨水を貯めてきたダムと考えれば適当か。雨が集まって川になり、川が海へと注ぐ水の循環と同じシステムが、産業においても成立していると言える。

産業のマトリクス構造/筆者作成

このような光合成を起点とした視点で見た場合、原材料の種類を横軸、その原料の加工程度を縦軸とするマトリクス構造として産業全体の構造を捉えることができる。一般消費者に向けた製品を出口としている企業で働いている場合、大抵は自分の働く会社をこのマトリクスのどこかにマッピングすることができるはずだ(金属資源系の産業はまた別)。自分の会社や仕事はどの系列の原材料から来ていて、上流・中流・下流で分けるとどの辺に位置するものなのかがわかると、前後左右の繋がりも自然と理解しやすいものになるだろう。

一般消費者まで届いた製品は消費されたのちに廃棄物として処理され、最終的には焼却や分解を経てCO2になり大気中へと戻っていく。水の循環で例えれば、海まで辿り着いた水が蒸発して雲になるようなものだ。大気中に戻ったCO2は光合成の原料となり、植物資源としての再生を介して再び産業の川の中に取り込まれていく。こうしてみると産業というのは『光合成』を起点とするCO2の循環に本体があり、その流れに沿った形で経済が動いていることが理解できる。

産業というと自然と切り離されているものとイメージされがちだが、実際は自然の循環法則の中にあって、その一部を切り出して〝産業〟と名付けているに過ぎないことがわかる。農業、食品産業、石油産業、化学産業、エネルギー産業など各業界ごとに区別されてはいるものの、一括りでいえば『光合成産業』として集約できるわけだ。光合成視点で見れば人類同様、産業もまた皆兄弟と言える。

ちなみに、なぜ私がこのような体系だった形で産業構造をまとめたがるのか、というと全体像と繋がりがわかることで、各産業の動きを把握しやすくなり、未来のビジネスの予測も立てやすくなるからだ。現代社会は大きく、かつ複雑になりすぎて、一つ一つの産業の動きを理解するだけでも相当な労力を費やす。仮に自分の属する産業界の動きを把握していたとしても、そこでの動向が全体の流れにおいてズレたものであったら元も子もない。そもそも業界ごと方向を見誤って進んでいる、ということすらあったりする。

ズレた業界の中でどんなに一生懸命仕事していても徐々に先細っていき、最後は肩を叩かれて退場、という話になってしまう。まず初めに被害を受けるのは業界の舵取りや会社の方針に疑うことなくついてく従純な労働者なのである。このリスクを下げるためには、各個人レベルでも全体を俯瞰して流れを見る力が必要があり、私の場合はその視点を作るために光合成という事象を用いているわけだ。

光合成を軸として自分なりに産業構造を再構築する。その再構築させた産業構造の中で、自分達のやっている仕事がどの位置にあるか、時代はどの方向に流れているか、その流れの中での位置どりに問題はないか、そんな風に自分のやっている仕事のポジションを確認しながら進めている。結局、生き残るためには自分のいる位置を把握し、そこの流れを読む力を磨く以外ないわけで、そのためには自分なりの視点が基盤として必要だ。

CO2を介した産業の循環/筆者作成

少し話がそれてしまったが、次に『光合成産業』という視点で見たときに藻類がどのような位置に入るか、ということを考えたい。結論からいえば、藻類とは科学技術の進歩によって取り扱うことが可能になった新しい資源(『藻類資源』)だと言える。つまり、『植物資源』『化石資源』に続き人類が利用できることになった第3の資源として捉えられるべきものなのである。現在の生産量から見れば資源というにはまだあまりにもちっぽけなものではあるが、それは立ち上がったばかりだからということで勘弁していただきたい。ちなみに将来的に人工光合成の効率が上がって実用化された場合、それは第4の資源として同列に位置付けられることになるだろう。

第3資源としての藻類/筆者作成

第3の資源である藻類資源は、植物資源と化石資源の間の子のような性質をもつ。食料として利用できるものから重油相当の炭化水素を生産できるものまで幅広い。このため、どちらの産業の流れにも入ることができるのが特徴だ。藻類資源という新たな源流が生まれることで、そこから派生する多くの産業の川が生まれていくことになるだろう。これまで接する機会の少なかった化石資源系の産業と植物資源系の産業が藻類資源の舞台では混じり合うことができる。ここでの異分野交流によって得られる新たな知見や視点は、次のビジネスチャンスを生み出す原動力になっていくことだろう。

化石資源利用の弊害が顕著になる一方、植物資源量の大幅な増加も見込めない現状、人類が今の豊かな生活を維持したまま存続させていくには新たな資源を生み出す以外にない。そんな人類に対して、第3の資源として現れた藻類。今後も人類が存続してく限り、この新しい資源の利用が増える事はあっても減る事はないだろう。そして藻類資源の生産量が増えていくに伴って、そこから派生する藻類産業はどんどん裾野を広げていくはずだ。

いかがだろうか。なんか最近物珍しい藻類商品が身の回りに増えてきたな、と思うところからさらに一歩思考を進めて、現代に新しい資源とそれに伴う産業群が誕生しつつある、と考えればワクワクして来ないだろうか。

アメリカの藻類教育を進めている人たちも一時的なブームものとしてではなく、これからの産業の構造や人々の生活スタイルを変えるほどの可能性を秘めている新資源として藻類を捉えているはずだ。だからこそ次世代を担う子供達に向けての教育も始めているのだろう。我々も負けずに日本でもっと藻類のことを人々に知ってもらう活動を進めていかねば、とは思っているのだが、なにせ人手が全然足りていない。。藻類産業・藻類文化を一緒に切り開いて行ってくれる仲間は随時募集しているので、記事を読んで興味を持った方はこちらをクリックして下さい!