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欧州の藻類研究 -最新版-

欧州の藻類研究 -最新版-

Modia執筆者にニューメンバー川原田が加わりました。欧州でバイオエコノミーを学んだ熱気あふれる人物です。今回は川原田が最新の欧州藻類研究について紹介します。今後の記事にもご期待ください!


欧州の藻類研究は、欧州委員会によって管理される研究開発用の枠組みプログラム『HORIZON2020』の基で2014年から2020年までを一つの区切りとして各プロジェクトが進んでいる。2017年までの欧州の藻類研究については以下をご覧いただきたい。

現在は2016年、2017年より開始された15のプロジェクトが2020年、2021年までの期間で進行してるが、2018年より開始されたプロジェクトは1つに留まる。


51)Production of phycocyanin from the Spirulina arthrospira sp. Revisiting the sourcing, extraction and co-valorization of the whole algae in the frame of an industrial biorefinery concept(産業バイオリファイナリーの枠組みに則ったスピルリナからのフィコシアニンの調達・抽出と価格安定化の見直し)

【概要】フィコシアニンの世界市場は年間100トンと大きく、現在も成長を続けている。とりわけ自然由来の食品顔料色素としての需要が見込まれるが、技術的制約が大きく世界各地で技術改良が続けられている。
本プロジェクトは、先端的な技術を用いたデモプラントを建設し、年間10トンをフィコシアニンの生産することを目的とする。デモプラントの成功はその先の商業化に向けて重要なステップである。参画企業は4年間戦略的パートナーシップを締結し、技術面や市場分析、ライフサイクルアセスメントを共同で行い、産業バイオリファイナリーの枠組みの中で、スピルリナのフィコシアニンから残渣まで生産物全てを有効活用できるように原料調達、抽出から価格の安定化までに取り組むビジネス戦略を立てる。
本プロジェクトは環境への悪影響を低減しつつ、ヨーロッパのバイオマス生産者と産業の競争力を高め、雇用と投資の機会を増やす。
【委託先】(中核機関)Greensea S.A.S.社(フランス) (参加機関)Algaia社(フランス)、 Milis Energy Societa Agricola srl.(イタリア)、Mial GmbH(ドイツ)アイルランド国立大学ダブリン(アイルランド)
【期間】2018年5月1日〜2022年4月30日
【総費用】€ 5,607,885 (€1=122円とすると約6億8400万円) 
https://cordis.europa.eu/project/rcn/217856/factsheet/en


欧州の農業分野の有機栽培についてはEU規則(EC)No. 834/2007 Art. 42(EC) No. 889/2008で、栽培時からパッケージングまでにおける詳細な取り決めがされている。そこには当初微細藻類は含まれていなかったため、加盟国の国内で独自に決める仕組みになっていた。後に、2016年4月29日、EU規則(EU)2016/673で正式に微細藻類の有機栽培について追記されている。

欧州におけるスピルリナの培養について調査すると、イタリアの生産者が多いことが垣間見えた。イタリアでは先駆けて、CCPB srl(イタリア)という有機製品の認証を行っている機関が、スピルリナ有機栽培についての取り決めを定めプライベートスタンダード「(EC)No. 834/2007 42条に基づくスピルリナの生産・精製・商品化とパッケージングに関する私法」をイタリア農務省に2011年に提出し、認められている。
※プライベートスタンダード・・・厳格な法的枠組みではなく、民間商取引に適用される私法。

イタリアは私が見る限り、食に対する意識がとても高く、食だけでデパートが建ち、おいしい郷土料理に恵まれていて老若男女、おいしいものをいつも楽しんで食べている印象だ。その中でスピルリナが流行りだしていることが興味深く、古き良きを大事にする方々がどのようにこの新しい食材を楽しくしてくれるのかが今後目を離せない。
Non vedo l’ora di mangiare il cibo all’Alga spirluina!(スピルリナ料理を食べるのが楽しみ!)

この記事を書いた人

長野高専を経て東京大学農学部を卒業。カーボンニュートラルの概念に出会う。卒業後理科教諭をしながら、欧州で提唱され始めたバイオエコノミーという考え方に刺激を受け、居てもたっても居られなくなり渡欧。名門ホーエンハイム大学(ドイツ)、さらにルーベンカトリック大学(ベルギー)で生物工学、農学、経済学、法学と幅広い領域を学ぶ。ドイツとベルギーのビールの美味しさと、欧州での藻類の実用化研究や政策の充実さに衝撃を受けつつ帰国。藻類の知識がなかった留学中に日本語で懇切丁寧に書かれたModiaに救われた事をきっかけに、ちとせ研究所に入社。Modiaを書く側に至る。今欲しいものは藻でできたスマホケース。

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