今回は欧州の微細藻類燃料開発の動向についてまとめてみる。2010年あたりの藻類燃料ブームの際に米国の盛り上がりに引っ張られる形で、大型予算がついたプロジェクトが複数走っていたが、現在はトーンダウンしている。欧州も米国同様に戦略的にプロジェクトを走らせて、その結果を踏まえて次の戦略を立てているのが特徴的である。

EUの微細藻類燃料研究の動向

2016年11月に発表された欧州員会の戦略的エネルギー技術計画(Strategic Energy Technology Plan:SET-plan)によると、微細藻類燃料で設定されている目標値は、2020年時点で『70ユーロ以下/M Wh』となっている。1M Wh = 0.086 toe(IEA基準)とすると、原油換算で1M Wh = 101.1リットルということとなり、日本円換算だと約90円/リットルとなる(1ユーロ= 130円とする)。2030年には2020年の半分を目指すということで、45円/リットルということとなる。

この設定値は『2030年までに年間50億ガロン(1ガロン= 3.785リットル)の微細藻類由来燃料を1ガロンあたり3ドル(日本円換算で約84円/リットル、1ドル= 106円とする)で生産する』という米国の目標値よりかなり高い値で設定されている。ただし、EUの場合は生産量については言及していない。

EUの微細藻類研究は2007〜2013年の枠組みプログラムであったFP7内で採択され、本格的に始まった。米国での盛り上がりを受けて、2010年あたりから微細藻類燃料関連のプロジェクトが採択され、現在までに全10のプロジェクトが行われている(現在進行中も含む)。この中でも中核となるプロジェクトが2011年から始まった「BIOFAT」, 「All-Gas」, 「InteSusAl」と呼ばれる3つの大型の微細藻類燃料研究プロジェクトで、これら3つのプロジェクトは『ALGAE CLUSTER』と総称されている。ALGAE CLUSTERへの予算投下総額は約 30.4百万ユーロ (日本円換算3,956百万円相当、1ユーロ= 130円とする)であった。以下にALGAE CLUSTERを含めた、EUでの燃料関連プロジェクトについて説明していく。

微細藻類燃料に関するEUグラント一覧表/筆者作成

1)SOLARH2:European Solar-Fuel Initiative – Renewable Hydrogen from Sun and Water. Science Linking Molecular Biomimetics and Genetics.

【概要】環境に安全な資源から再生可能な水素(H2)生産を達成するための統合された基礎研究を行う。人工光合成のための生物模倣化合物を設計し、合成を進める。本プロジェクトでは、光合成微細藻類およびシアノバクテリアにおけるH2形成反応の理解を高めるために、遺伝子レベルでの研究および開発を行う。これらの研究は、新規遺伝子および代謝工学を用いた生物のH2生産能力の改善を目的としている。このプロジェクトはまた、バイオリアクターにおける光合成生物によるH2生産の概念を実証することも含んでいる。
【委託先】<公的機関>原子力・新エネルギー庁(フランス)、マックス・プランク研究所(ドイツ)、FUNDACIO PRIVADA INSTITUT CATALA D’INVESTIGACIO QUIMICA(スペイン)、生物研究センター(ハンガリー)、フランス国立科学研究センター(フランス) <大学> ウプサラ大学(スウェーデン)*(中核機関)、トゥルク大学(フィンランド)、フーリエ大学ベルリン(ドイツ)、ルール大学ボーフム(ドイツ)、ジュネーブ大学(スイス)、ビーレフェルト大学(ドイツ)、ワーゲニンゲン大学(オランダ)
【期間】2008年2月1日〜2012年1月31日
【費用】プロジェクト総費用5,533,970ユーロ(日本円換算719百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

2)MABFUEL:Marine Algae as Biomass for Biofuel.

【概要】海藻や培養された微細藻類からバイオ燃料を生産するための新しい知識と技術の獲得を目的とした多分野の研究プロジェクトである。本プロジェクトでは、海藻および微細藻類からのバイオ燃料生産について経済的、環境的評価から最も可能性のある規模を特定する。この調査をもとに、バイオ燃料生産において最も適切で収益性の高いプロセスを踏まえ、バイオマス製品と生産と抽出の方法論について理解を進める。
【委託先】<公的機関>生物研究センター(ハンガリー) <大学>クィーン大学ベルファスト(イギリス)、ダンドーク工科大学(アイルランド)、ガズィアテンプ大学(トルコ)、EGE大学(トルコ) <企業>DAITHI O’MURCHU MARINE RESEARCH STATION社(アイルランド)*(中核機関)、Green Biofuels Ireland社(アイルランド)、DOLPHIN SEAWEEDS社(イギリス)
【期間】2009年6月1日〜2013年5月31日
【費用】プロジェクト総費用1,430,841ユーロ(日本円換算186百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

3)AQUAFUELS:Alage and aquatic biomass for a sustainable production of 2nd generation biofuels.

【概要】持続可能性と社会的影響を踏まえて、EUの将来の再生可能エネルギー源ポートフォリオにおける微細藻類および水生生物の必要性を検討する。バイオ燃料の原料としての微細藻類やその他の水生生物の潜在的可能性を把握するために、科学的、法的、工業的および技術的な知識をとりまとめる。また、環境、経済、社会の持続可能性の観点から、回収から燃料使用までのライフサイクル全体の分析も進める。
【委託先】<公的機関>EUROPEAN BIODIESEL BOARD(ベルギー)*(中核機関)、チェコ科学アカデミー微生物学研究所(チェコ共和国) <大学>フィレンツェ大学(イタリア)、ワーゲニンゲン大学(オランダ)、ベングリオン大学(イスラエル)、アルメリア大学(スペイン)、インペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス) <企業>DIESTER INDUSTRIE社(フランス)、ROQUETTE FRERES社(フランス)、Necton社(ポルトガル)
【期間】2010年1月1日〜2011年6月30日
【費用】プロジェクト総費用869,001ユーロ(日本円換算112百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

4)SUNBIOPATH:Towards a better sunlight to biomass conversion efficiency in microalgae.

【概要】微細藻類の光合成効率を上げることを目的とする。材料としてはChlamydomonas reinhardtiiおよびDunaliella salinaを用い、葉緑体工学を用いて集光機構を改良し、光合成能力の増強を目指す。作成された微細藻類は異なるサイズ(最大250リットル)のバイオリアクターを用いて培養し、生産性を確認する。また、できたバイオマスはメタンガス発生原料としての利用も検討する。
【委託先】<公的機関>フランス国立科学研究センター(フランス)、ワイツマン科学研究所(イスラエル) <大学>リエージェ大学(ベルギー)*(中核機関)、ビーレフェルト大学(ドイツ)、ヴェローナ大学(イタリア)、ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(ドイツ)、ジュネーブ大学(スイス)、ロンドン大学(イギリス)、カールスルーエ工科大学(ドイツ)、ワーゲニンゲン大学(オランダ)
【期間】2010年1月1日〜2013年2月28日
【費用】プロジェクト総費用4,366,894ユーロ(日本円換算568百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

5)DIRECTFUEL:Direct biological conversion of solar energy to volatile hydrocarbon fuels by engineered cyanobacteria.

【概要】微細藻類を利用して太陽エネルギーと二酸化炭素から直接的に燃料を取り出すシステムを目的とする。揮発性最終生成物のエチレンおよび短鎖n-アルカンエタンおよびプロパンを遺伝子組み換えシアノバクテリアを用いて生産させ、破砕による抽出をせずに直接的に燃料を回収するという戦略を取っている。宿主として用いているのはSynechocystis sp. PCC 6803。
【委託先】<大学>アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルク(ドイツ)、フンボルト大学ベルリン(ドイツ)、トゥルク大学(フィンランド)*(中核機関)、マンチェスター大学(イギリス)、コペンハーゲン大学(デンマーク) <企業>PHOTON SYSTEMS INSTRUMENTS 社(チェコ共和国)、TEKNOLOGIAN TUTKIMUSKESKUS社(フィンランド)、BIOCHEMTEX 社(イタリア)
【期間】2010年10月1日〜2014年9月30日
【費用】プロジェクト総費用4,977,781ユーロ(日本円換算647百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

6)BIOFAT:BIOfuel From Algae Technologies.

【概要】微細藻類燃料研究の上流から下流までを統合的に行うためのデモンストレーションプロジェクト。本プロジェクトはエネルギー効率、経済性、環境の持続、の3つの可能性を検討することが目標である。本プロジェクトは2つのステップからなる。
・ 1st ポルトガルとイタリアでそれぞれ0.5ha規模のパイロット設備を構築し、その最適化を行う。
・2nd 経済的なモデリングと10ha規模のデモ施設での実証を行う。
1stステップの2つのパイロット設備は、その実証を通して産業化のための価値付け戦略を検討しつつ、EUにおける微細藻類バイオ燃料生産の実現可能性について確認することを目的としている。2ndステップの10ha規模のデモ施設は、微細藻類によるバイオ燃料生産がどのように機能するかの実証を目的としている。また燃料以外の付加価値化合物も生産されるバイオリファイナリープロセスによって、「微細藻類生産プラットフォーム」が経済的収支を保って機能できるかを確認する。
【委託先】<大学>フィレンツェ大学(イタリア)、ベングリオン大学(イスラエル) <企業>A4F社(ポルトガル)*(中核機関)、Fotosintetica & Microbiologica 社(イタリア)、Evodos社(オランダ)、Algosource Technologies社(フランス)、A&F Fratelli Parodi Spa 社(イタリア)、Abengoa Bioenergy 社(スペイン)、IN社(イタリア)、Hart Energy 社(アメリカ)
【期間】2011年5月1日〜2015年4月30日
【費用】プロジェクト総費用10,016,182ユーロ(日本円換算1,302百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

7)All-Gas:All-gas project demonstrates the sustainable large-scale production of biofuels based on low-cost microalgae cultures using municipal wastewater.

【概要】都市排水を使用した低コストの微細藻類培養技術の開発とそれに基づくバイオ燃料の大規模生産の実証を行うプロジェクト。培養ポンドから微細藻類のバイオマスの分離、下流のバイオ燃料の生産と精製のための処理、そして車両での利用まで一連のプロセスの実証を行う。培養規模としては最大4haを想定している(2018年時点では2ha)。
ターゲットとしている微細藻類の年間あたりの生産性はha当たり100 tトン(乾燥重量)/ 年 。FAME(Fatty Acid Methyl Ester:脂肪酸メチルエステル)に変換可能な特性を持つ油脂が乾燥重量あたり20%ほど抽出することができれば、1ha当たり20台の車を毎年走らせるのに十分なバイオディーゼル生産が期待できる。微細藻類から抽出された油はコンソーシアム内の担当パートナーによって変換され、モーターテスト施設で実証試験される。
油分を抽出された微細藻類残渣は、バイオガス発生原料として排水と一緒にメタン発酵される。バイオガスは精製・圧縮されたのち、車両用の燃料として供給される。1ha当たり20台分の車(バイオディーゼルとして燃料供給される量とほぼ同等またはそれ以上)を走行させるのに十分な量のバイオガスが得られる想定である。
【委託先】<大学>サウサンプトン大学(イギリス) <企業>Aqualia社(スペイン)*(中核機関)、Fraunhofer社(ドイツ)、HYGEAR社(オランダ)、BDI BioEnergy International社(オーストリア)
【期間】2011年5月1日〜2016年4月30日
【費用】プロジェクト総費用11,773,672ユーロ(日本円換算1,531百万円相当、1ユーロ=130円とする)

8)nteSusAl:The overall objective of InteSusAl is to demonstrate an integrated approach to generate biofuels from algae in a sustainable manner on an industrial scale.

【概要】従属栄養ルートと光合成ルートの両方によって微細藻類の生産を最適化し、これらの生産技術(レースウェイ型ポンド、バイオリアクター、および従属栄養生産(発酵))を統合しながら、1ha当たり90-120トン(乾燥重量)/年の微細藻類生産を目標とする。
このプロジェクトでは、微細藻類種と培養技術を選択して、バイオディーゼル生産に適した脂質プロファイルを持つ藻類油を抽出する。抽出された油はバイオディーゼルに変換して標準仕様に適合できるかを検証する。従属栄養源としては藻類油を燃料へと変換した際に出てくるグリセロールをリサイクルして利用する。
【委託先】<公的機関>Centre for Process Innovation(イギリス)*(中核機関)、European Renewable Energy Centre (イギリス)、Royal Netherlands Institute for Sea Research (オランダ)、OFFSHORE RENEWABLE ENERGY CATAPULT(イギリス)、Seferihisar Municipality(トルコ)、BORNOVA BELEDIYESI(トルコ) <大学>ワーゲニンゲン大学(オランダ) <企業>Necton社 (ポルトガル)、EGE BIYOTEKNOLOJI SANAYI VE TICARETANONIM SIRKETI社(トルコ)、GEA WESTFALIA SEPARATOR GROUP(ドイツ)
【期間】2011年5月1日〜2015年10月31日
【費用】プロジェクト総費用8,642,970ユーロ(日本円換算1,124百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

9)CYANOFACTORY:Design, construction and demonstration of solar biofuel production using novel(photo)synthetic cell factories.

【概要】最新の合成生物学の知見を踏まえて、太陽光を用いた自立型細胞工場として使用可能な組み換えシアノバクテリアを開発することを目指す。生産物としては水素をターゲットとし、宿主となるシアノバクテリアとしては Synechocystis sp. PCC 6803を用いる。
【委託先】<公的機関>Biologicalia Molecular e Celular Instituto de Biologia(ポルトガル)、CONSIGLIO NAZIONALE DELLE RICERCHE(イタリア) <大学>ミットヴェイダ大学(ドイツ)、ウプサラ大学(スウェーデン)*(中核機関)、ルール大学ボーフム(ドイツ)、リュブリャナ大学(スロベニア)、シェフィールド大学(英国)、バレンシア工科大学(スペイン) <企業>KSD INNOVATIONS社(ドイツ)、L M2M ENGINEERING 社(イタリア)
【期間】2012年12月1日〜2015年11月30日
【費用】プロジェクト総費用3,914,852ユーロ(日本円換算509百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

10)DEMA:Direct Ethanol from MicroAlgae

【概要】低コストなフォトバイオリアクターを使用した微細藻類からバイオエタノールを直接生産するための経済的に競争力のある技術開発を目的とする。1リットルあたり0.40ユーロ以下でのバイオエタノール生産を目指す。材料としては遺伝子組み換えしたシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803を用いる。
【委託先】<公的機関>Laboratorio Nacional de Energia e Geologia I.P.(ポルトガル) <大学>アムステルダム大学(オランダ)、リムリック大学(アイルランド)*(中核機関)、ケンブリッジ大学(英国)、トゥルク大学(フィンランド)、インペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス) <企業>A4F ALGAFUEL 社(ポルトガル)、PHOTANOL 社(オランダ)、ERCANE 社(フランス)、 Pervatech社(オランダ)
【期間】2012年12月1日〜2017年5月31日
【費用】プロジェクト総費用6,388,935ユーロ(日本円換算831百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

11)ACCLIPHOT:Environmental Acclimation of Photosynthesis.

【概要】本プロジェクトは植物や微細藻類の光合成馴養プロセスについて研究する。具体的には、環境変化、電子伝達活性、光合成代謝、植物および微細藻類の成長に応答するシグナル伝達経路を調査する。モデル植物としてシロイヌナズナ、モデル微細藻類としてChlamydomonas reinhardtiiを用いて新規メカニズムを明らかにするための基礎研究が行い、得られた基礎知見はバイオ燃料の産業研究の対象となる珪藻Phaeodactylum tricornutumへ反映させていく。
【委託先】<公的機関>フランス国立科学研究センター(フランス) <大学>ハインリッヒ・ハイネ大学(ドイツ)*(中核機関)、ヴェローナ大学(イタリア)、ジュネーブ大学(スイス)、チューリッヒ工科大学(スイス) マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク(ドイツ)、オックスフォード大学(イギリス)、ナント大学(フランス)、パリ第6大学(フランス)、アバディーン大学(イギリス) <企業>DAITHI O’MURCHU MARINE RESEARCH STATION 社(アイルランド)、FERMENTALG社(フランス)、CELLECTIS社(フランス)
【期間】2012年10月1日〜2016年9月30日
【費用】プロジェクト総費用4,028,607ユーロ(日本円換算524百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

12)FUEL4ME:FUture European League 4 Microalgal Energy.

【概要】微細藻類由来燃料生産のための下流工程の開発を進める。具体的には2ステッププロセスを、高脂質含有量を有​​する連続1ステッププロセス(製造プロセス)に変え、連続的な変換プロセスを開発する。また、生産と変換プロセスの統合を行う。
【委託先】<公的機関>STICHTING WAGENINGEN RESEARCH(オランダ)*(中核機関) <大学>ワーゲニンゲン大学(オランダ)、ベングリオン大学(イスラエル) <企業>Fotosintetica & Microbiologica 社(イタリア)、EVODOS社(オランダ)
・PURSUIT DYNAMICS 社(英国)、FEYECON DEVELOPMENT & IMPLEMENTATION 社(オランダ)、NESTE社 (フィンランド)、JOANNEUM RESEARCH 社(オーストリア)、IDCONSORTIUM 社(スペイン)、CELLULAC社 (アイルランド)、PROVIRON HOLDING 社(ベルギー)、NORSKER INVESTIGACIONES 社(スペイン)
【期間】2013年1月1日〜2016年12月31日
【費用】プロジェクト総費用5,369,514ユーロ(日本円換算698百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

13)SOLENALGAE:Improving photosynthetic Solar energy conversion in microalgal culture for the production of biofuels and high value products.

【概要】微細藻類の光合成において、太陽光の45%が吸収されて使用される場合、理論的に達成可能な最大の光合成効率は10%となる。しかし、これまでに得られたバイオマスの生産性から計算される光合成効率は1〜3%にとどまっている。本プログラムでは光合成効率を向上させ、バイオマスの生産性増加を狙う。
【委託先】<大学>ヴェローナ大学(イタリア)*(中核機関)、ミラノ工科大学(イタリア)
【期間】2016年3月1日〜2021年2月28日
【費用】プロジェクト総費用1,441,875ユーロ(日本円換算187百万円相当、1ユーロ= 130円とする)

 

EUの微細藻類燃料戦略は、中核となるALGAE CLUSTERで3つの異なる進め方を設定し、それぞれを検討しているのが特徴となっている。

ALGAE CLUSTER構成プロジェクトの比較/筆者作成

BIOFATは最もストレートなタイプで、微細藻類の培養形態をいくつか試しながら燃料生産の可能性を検討している。ALL-Gasでは、都市排水を用いて、排水処理しながら微細藻類を生産し、そこから燃料を回収するという一石二鳥を狙ったものである。InteSusAlは従属栄養+独立栄養を組み合わせたハイブリッド型生産方式での燃料生産の事業性についての検討となっている。

3通りの異なる方向性を試し、どの方向性が最も事業性が見込めるかを見極めていく、というのがEUの微細藻類燃料生産での戦略といえよう。また、ALGAE CLUSTERとは別ラインとして、遺伝子組み換え微細藻類を用いた水素やエタノールの生産、といった研究も並行して進めている。

EUにおける微細藻類燃料関連のプロジェクトを時系列に沿ってまとめてみると2010〜2012年の間に始まったものが多い。これは2007年から2013年をカバーするFP7と呼ばれる枠組みプログラムの時期に該当している。逆に現在の枠組みプログラムHorizon2020内においては、微細藻類燃料を主眼に置いたプロジェクトがSOLENALGAEの1つだけに減っている。これはFP7でのALGAE CLUSTERを含めた燃料関連研究の実証結果を踏まえて、燃料よりも単価の高い物質を用いた産業化を第一優先にする戦略へと切り替えただめではないだろうか。

HORIZON2020での燃料関連の研究は1つへと減少した一方、微細藻類全体でみると54のプログラムが走っている。これは、EU内での微細藻類燃料開発に対しての盛り上がりが落ち着いた一方で、微細藻類そのものに対する興味自体は継続していることを示唆している。

燃料生産を軸に行ったALGAE CLUSTERの結果から、燃料以外でのポテンシャルのある各種分野への総合的な展開を目指す、と大きく舵を切ったのが現在のEUにおける微細藻類戦略の特徴だといえよう。