今年ももうすぐ夏が終わろうとしている。例年よりも雨の日が多い一方で、晴れの日には35℃以上の「猛暑日」になるまで気温が上がり、屋外で快適に過ごすことが難しかった夏であったように思える。

今回は、そんな猛暑日をはるかに超える高温の中でも生育する生物について紹介したい。

熱水泉から放たれる鮮やかな七色の正体

米イエローストーン国立公園の熱水泉(Grand Prismatic Spring)は、鮮やかな色彩により、観光客に人気の写真スポットである。

Photo by James St. John – Grand Prismatic Spring (5 June 2013) 17 / CC by 2.0

この泉の七色の正体はバクテリアや藻類が産生する色素によるもので、緑色はクロロフィル由来、黄色・オレンジ・赤色はカロテノイド由来の色だ。熱水泉の中心は87℃にも及び、こうした高温の中で生き延びる生物は熱安定性の高いタンパク質を持つ、という特徴がある。

また、温泉大国である日本では、こうした熱安定性の高い「温泉藻」を活用した商品が開発されている。

高校球児に使用された温泉藻

大分県別府市にある(株)サラヴィオ化粧品は、世界一の泉源数を誇る地元の温泉地を中心に、これまで多くの藻を発見してきた。そしてこの中で、新種の藻類である温泉藻類RG92が安全性と有効性に最も秀でており、痛み・かゆみの軽減や炎症の抑制、さらにアンチエイジング作用があることを特定した。

このRG92の特徴を活かし、日焼け止め、ヘアケア、スキンケアなどが商品化されている。その中でも、「RG92マルチアクティブローション」は、夏の甲子園でベスト8に進出した大分県明豊高校の野球部に寄贈され、プレー後の疲労回復や日焼けによる炎症の対策として使用されていた。

東南アジアでの経験から考える温泉藻の可能性

スキンケアや紫外線対策として商品化されている温泉藻であるが、私自身は、東南アジアで藻を培養した際に大変苦労したことが、温泉藻に興味を抱いた原点だ。

一般的に、藻類を生産する際には培養時の水温の過上昇が問題となる。藻類は水温が40℃を超えると生産速度が低下し、最悪の場合は死滅に至る。東南アジアでは、以前コラムにも登場したフォトバイオリアクター(PBR)を用いて藻類の培養を行ったが、最高水温が50℃近くまで達することがあった。現地では水温過上昇の対策として、ミスティング(霧吹き)を行い、PBRの容器に付着した水の気化熱を利用して水温を下げていったが、こうしたミスティングを実施するためには設備の建設コストや、大量の水が必要となる。

しかし、「温泉藻」に代表される高温で生育が可能な藻類を活用すれば、水温過上昇の対策のためのコストを削減できる可能性がある。また加えて、常温で繁殖する雑菌や雑藻によるコンタミネーションの抑制に繋がるかもしれない。

高温環境における藻類を発見・採取することは、藻の培養面、また新たな機能性の発見において、今後大きな可能性があるのではないかと期待している。

 


参考資料
Grand Prismatic Spring
http://www.lpi.usra.edu/education/fieldtrips/2007/explorations/grand_prismatic/