先日公開された藻ディアの記事で、「太古の海洋における藻の大繁殖と動物の進化・繁栄の関連性」について紹介された記事があった。その中で取り上げられた論文について、海外のニュース記事では「Algae paved way for animal evolution(藻類が動物の進化の道を作った)」という大層なタイトルを付けて紹介されていた。


今回は、このタイトルとは180度異なる、藻の話を紹介していく。

藻が持つ負のイメージ

インターネットのニュースサイトで、「藻」や「Algae」を検索してみると、藻類が持つタンパク質(当記事を参照)やジェット燃料(当記事を参照)等の明るい話題ではなく、人間に害を及ぼす藻についての話が大半を占める。その中でも、我々日本人にとって馴染み深いのは「赤潮」ではないだろうか。海や川の水が変色する「赤潮」は、大繁殖した藻自体が毒性物質を生産する場合もあるが、実際多くの場合は、藻の大繁殖に伴う他の有害微生物の同時大繁殖やそれに伴う海水中の酸素が欠乏など、複数の要因が絡み合って生じるようだ。

こうした大規模に海水中の酸素が欠乏してしまう事象は「海洋無酸素事変 (Oceanic Anoxic Events, OAEs)」と呼ばれている。OAEが生じると、海底付近が無酸素状態となるため、海面で繁殖し海底に沈殿した藻類等の死骸は細菌や動物によって分解されることなくそのまま堆積する。その結果、地層を分析することで、どの地域にどの時代でOAEが起こっていたのか推測できるそうだ。

例えば、今から約9,400万年前、約60万年という長期間に渡って大規模なOAE (OAE-2と呼称されるそうです)が生じていたと考えられている。そしてこのOAE-2が、活発な火山活動による海洋への大規模な栄養分の流出、及びそれに伴う藻類の大繁殖等によるものであったと、下記論文では推察されている。

Chadlin,M. et al., Constraining the rate of oceanic deoxygenation leading up to a Cretaceous Oceanic Anoxic Event (2017)

藻類の繁殖と動物絶滅の関係性

また、この論文を紹介していたニュース記事には、同時期に少なくとも3種類の大型水生爬虫類 (スピノサウルス、プリオサウルス、魚竜類) および海洋無脊椎動物の約27%が絶滅したと言及されている*。
*現在も海洋の酸素は減少し続けているようで、「Dead Zone」と呼ばれる無酸素海域が世界中で拡大しているそうだ。この「Dead Zone」が、数世紀の間に大陸棚の16%程度に及ぶ可能性があることについて、記事内でも警鐘が鳴らされている。

Our Oceans Will Be Riddled With Death In The Near-Future

これらの絶滅は「大量絶滅」には分類されないが、十分に大規模な絶滅であったと言える*。藻の繁殖と動物の絶滅にどこまで相関性があるのか分からないが、藻の大繁殖が動物の大繁栄を引き起こすことが有り得るならば、反対に大絶滅を誘因したとされても不思議ではないなと感じている。
*ティラノサウルスやトリケラトプス等の恐竜が絶滅したのも、同じ白亜紀 (1億4,500万年前から6,600万年前)の後期であると言われている。ただし、こちらは白亜紀後期の隕石の衝突が原因であると言われている。

藻の大量生産を目指す一方で、藻の大繁殖が、地球規模での動物の大繁殖や大絶滅の引き金になっていた可能性があるというのは、なんとも考えさせられる話だ。石油、原子力、遺伝子組み換えだけでなく、藻類一つをとってみても、「サステナビリティ」とは本当に難しい話だと改めて考えさせられる。