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日米欧の予算比較

日米欧の予算比較

米国、日本、EUの微細藻類研究に関して、国の予算動向面からまとめてきた。微細藻類研究に本格的な予算が投下され始めた2009年から2017年までに各国の微細藻類研究に投下された予算総額について以下の図に示す。米国が約370億円、日本が約180億円、EUが約290億円となっている。内訳として、燃料関連の研究費が、米国約370億円、日本約140億円、EU約90億円、燃料以外の研究予算は、米国は無し、日本約40億円、EU約200億円となっている。

日米欧の微細藻類研究予算の総額の比較(2009年〜2017年)/筆者作成
微細藻類研究に予算が投下され始めた2009年から2017年までの間に、国から予算がついた藻類研究費の比較。予算規模としては米国、EU、日本の順番で、米国は日本の約2倍、EUは日本の約1.5倍となっている。米国は燃料関連に予算を集中させている一方、EUは燃料から燃料以外への研究に軸足を移している。日本は燃料研究を中心にしつつ、近年は燃料以外の研究も出てきている。

日米欧の中では米国が最も予算投下額が大きく、日本の約2倍である。その次はEUで、日本の約1.5倍となっている。動向としては、米国は燃料関連の研究費に集約させている一方で、EUは燃料関連よりも燃料以外の研究費の割合が多い。日本は燃料の方が多いが、燃料以外の研究費についても予算がついている。

【燃料関連の藻類研究予算の動き】

燃料関連研究の予算投下の移り変わりを見ていくと、2009年に米国で170億円を超える大規模な予算投下が行われているのが目立つ。これは米国がこれまで投下してきた予算総額の約半分に該当する。日本、EUは米国の積極的な予算投下を後追いする形で2010年、2011年にそれぞれまとまった額の予算をつけている。

米国は初期に巨額な研究費を投下して全体像と課題を把握し、その後は把握された課題を解決する技術へピンポイントな予算投下を継続している。

EUは方向性の異なる戦略をもった複数のプロジェクトに集中的に初期の予算を投下し、その中から可能性のある方向を伸ばす、という進め方をしている。この結果、EUは2014年以降は燃料研究への予算投下を止め、燃料以外の研究開発に予算を集中させている。

日本は企業や大学が先行して行っていた研究シーズに対して、国が予算をつけて補助する、という形をとっている。サポートした中で有望そうなものを絞り込み、そこに対するサポートを厚くして継続する、という選抜型の仕組みとなっている。

【燃料以外の藻類研究予算の動き】

燃料以外の研究への予算投下について見ると、米国は燃料研究に集中して進めているのに対し、EUは燃料関連研究への予算を止め、燃料以外の研究に対して予算を投下する傾向が見られる。EUも初期の頃(2010年頃)は燃料関連研究にまとまった予算をつけていたが、燃料研究の事業化は遠いと判断し、より事業化の近い分野での産業化を最初に狙うことに切り替えたためと推測される。

一方、日本は燃料関連を中心としつつ、並行して少しずつ燃料以外の研究にも予算が投下され始めた状態である。EUが国として戦略を切り替えたのに対して、日本の場合は大学や企業からの研究提案を国がサポート形式であるため、国が主導して方向性を定めているわけではない。世界の動向をみながら動き出すことになるため、トレンドから少し遅れて、かつ世界のトレンドを平均化したような取り組みが反映されてくる構図になっている。

藻類の研究だけを見てても各国のカラーというのが浮き上がってくるものだなと感じる。どのスタイルも一長一短あるので、それぞれの強みを生かした戦略を立てていくことが大事だ。日本はボトムアップ型のスタイルであるため、各テーマは小ぶりだが、研究内容に幅広いバラエティーがあるところが強みになるだろう。この幅の広さが共有できるような場を整え、研究者の交流を活発化させ、有望な研究については大きく育てていける体制を作っていくことがポイントだ。

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