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‘’藻類×卵 ‘’待望の第二弾!

‘’藻類×卵 ‘’待望の第二弾!

前回、藻類が卵の代替市場に参入しているという話を取り上げた。

今回新たに、藻類×卵の第二弾をお届けしようと思う。

皆さんはInstagramにおける、最も「いいね!」の数が多い投稿をご存知だろうか?
それは今年の1月4日にWorld Record Eggというアカウントがアップロードした、ある一枚の、ごく普通の卵の写真である。史上最多の「いいね!」獲得を目指し、“一緒に世界記録をつくろう!カイリー・ジェンナーが持つ記録を打ち破ろう!”とのメッセージが添えられており、投稿後わずか9日で目標を達成した。現在までになんと5200万以上もの「いいね!」を獲得し、堂々と王位についた。こうして、今も記録を更新し続けている「謎の卵」に世界中から注目が集まっている。

なぜ卵を選んだのか?「卵には性別、人種、宗教はない。卵は卵で、どこにでもある。」だからだそうだ。一見ただふざけているように見えて実はこんなに深い意味を持つとは、感心した。

さらにWorld Record Eggは「いいね!」獲得の目標を達成して終わりではなく、アメリカで毎年恒例のスーパーボウルのタイミングに合わせ、みんなに愛される「謎の卵」を動画広告に活用した。その動画は、2月3日に開催されたスーパーボウルの後にHuluで放映された。

動画は殻にヒビの入った卵の自己紹介から始まり、その後、ソーシャルメディアからのプレッシャーやストレスを理由に割れてしまう。続けて、あなたも同じように苦しんでいるなら、誰かに話しかけてくださいと言った後、卵は殻にヒビの入ってない姿を取り戻した。広告の最後には、非営利団体のメンタルヘルスアメリカのウェブサイトが掲載された。
※World Record EggのInstagramアカウントに投稿された動画はこちら

「謎の卵」のクリエイターによると、ユージーンと名つけられた卵は今後も他の問題に対して何らかの社会的メッセージを広げていくだろうとしている。ユージーンからの次のメッセージをとても楽しみしている。

前置きが長くなったが、個人的にも謎の卵を応援したいという気持ちもあり、今回も卵の記事を書くことにした。

卵はどれでも同じだと思われるかもしれないが、実は見た目が同じであってもニワトリに与える餌によって、低コレステロール卵や栄養強化卵など通常の卵とは成分が異なるデザイナーエッグ(designer egg)を作ることができる。近年、消費者の健康志向が高まるにつれ、このようなプレミアム卵が商品化されている。

ここで、藻が大きく活躍するのである。ニワトリの飼料に色々な種類の藻類を配合することで、付加価値の高い栄養強化卵を作ることができるのだ。
今回はそれらのうちのいくつかをご紹介したいと思う。

■アスタキサンチンプラス卵

ビタミンEの550倍、ビタミンCの6000倍も高い抗酸化作用が特徴のアスタキサンチンという赤色色素は、以前藻ディアでも取り上げているヘマトコッカスという藻類に多く蓄えられている。ヘマトコッカスを含んだ飼料で育てたニワトリは、アスタキサンチンを豊富に含んだ卵を産卵する。マレーシアのAlgaetech International Sdn Bhd社は、アスタキサンチンプラス卵を2019年はじめまでに、一日50万個販売することを目標としている。

■DHA・EPAプラス卵

海産魚類の油には、健康に良い様々な効果があるとされるDHAやEPAが多量に含まれていることが知られている。そのため、魚油や魚粉を飼料に配合することでDHAやEPAの含んだ卵を生産することができる。しかし、実はほとんどの海産魚類は自らDHAを生合成する機能を持っておらず、EPAの変換が可能な種類も一部に限られている。EPAやDHAは微細藻類によって合成され、その後、動物プランクトンや小動物と言った一連の食物連鎖の過程を経て最終的に魚の体内に蓄積されているのだ。現在は、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を生産するラビリンチュラ類(Schizochytrium)が新たな供給源として、魚油や魚粉の代わりに使用されている。オルテック社からはAll-G-RichというSchizochytrium limacinumパウダーが製品化されており、中国に供給先が何社もある。
また、中国のENNグループはナンノクロロプシスを飼料に使用することによって、EPAを含有した卵を開発した。

■カロチンプラス卵

高い抗酸化作用をもつβカロテンは、体内でビタミンAに変換されて夜間視力低下の予防や維持、皮膚や粘膜の健康維持など様々な働きをする。 (有)宮崎養鶏場の天然カロチンの卵は、赤色色素のβカロチンを豊富に含んだドナリエラ入りの飼料で生産された卵であり、普通の卵と比べて30倍ものβカロチンを含有している。

■ルテインプラス卵

ルテインと呼ばれる黄色色素は、加齢黄斑変性の進行を抑えたり、発症を予防するなど目の健康を守る働きをする。通常ルテイン強化卵はマリーゴールドを飼料に配合することで生産するが、ルテインを豊富に含んだクロレラの使用も可能であることが報告されている。

これら以外にも、現在、栄養強化や飼育法を工夫した高付加価値の特殊卵が数多く世に出回っており、国内で販売されているものは1,000種類以上もあるといわれている。皆さんの身近なところでも栄養強化と表示された卵を多く目にするようになっているのではないだろうか?その中に、藻類を餌として飼育されたニワトリが生んだ卵があるかもしれない。


参考資料
https://www.nytimes.com/2019/02/03/style/world-record-egg-instagram.html
http://www.cgegg.co.jp/
http://www.algaeindustrymagazine.com/algaetech-goes-international-astaxanthin-eggs/
https://zootecnicainternational.com/featured/dha-enriched-eggs-using-microalgae-layer-diets/
http://www.algaeindustrymagazine.com/demand-booming-china-algal-epa-fortified-eggs/
http://www.algaeindustrymagazine.com/algaetech-goes-international-astaxanthin-eggs/
http://www.n-hakko.com/karochin.html

この記事を書いた人

台湾出身、2010年来日。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号を取得後、ちとせ研究所に入社。ライフサイエンスに幅広く興味を持ち、生物の力を最大化に生かし人類の生活・環境へ貢献できるように努力している。周りに影響されることなく自分軸のある人生を歩む、中国語、英語、日本語の三ヶ国語を操るトリリンガル。

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