藻ガール尾張は池や沼があると、炎天下であっても暴風雨であっても、藻採取サンプリングせずにはいられません。今回は、少し前のお話しになりますがゴールデンウィークに見つけた、藻類界のスーパースター『バキラリア』を紹介します!


●学名:Bacillaria sp.
●分類:真核生物>SAR>ストラメノパイル>ケイ藻
●生息:日本を含め、世界中に分布。
●体長/形態:長辺約100 µm の細長い四角形をしている細胞が、群体に連なっている。長軸方向に滑る滑走運動をすることが特徴。
●レア度:★☆☆☆☆

ケイ藻は、「珪藻土」で知られるようにガラス質の殻をもっている藻類です。顕微鏡で観察すると、とても細かい模様が刻まれていて、まるでガラスの芸術品です。

バキラリアは、藻類の中でもとてもユニークな動きをします。下記の連続写真からわかるように、「南京玉すだれ」のようです。この動きは、「バキラリア・ダンス」と藻類マニアの中では言われていて、藻類屋さんの中では不朽の一発芸となっています。

尾張のフェイスブックでは、その動きを動画でもご紹介しています。是非一度ご覧ください!

(動画が再生されない場合は、下記URLよりご覧ください↓)
https://www.facebook.com/satomi.owari/posts/1792537824136734

ケイ藻は細胞内のアクチン、ミオシン、そして細胞外の粘液繊維(多糖)により1細胞で滑走運動をすることは知られています。しかし、バキラリアのこの連携された動きの生物学的な制御機構(細胞間の連携など)はわかっていません。また、この動きに数学的に解析を試みた研究も行われていますが、”カオス(chaotic、Ussing et al.2005)”と最後にまとめられているように、難解なようです。

採取サンプルにバキラリアがいると、誰しも思わず見惚れてしまいます。筆者も発見した時はバキラリアに夢中でした。

お気に入りスポット(千葉県手賀沼)で春のサンプリングを楽しむ筆者。(2018年5月。ここでバキラリアを見つけました)

晴れて気温も上がり過ごしやすかった今年のゴールデンウィーク。当時、池の水をすくって顕微鏡で観てみると冬から春への変化を垣間見ることが出来ました。藻類の密度は少ない中、バキラリアといったケイ藻の割合が多いのが春の特徴です。

冬は、池の底と表層の水温差がなくなるため対流が起こり、底に溜まっていた栄養塩は表層へと自然に舞い上がります。しかし、冬は水温が低いため藻類の増殖は抑制されており、種類も量も多くはありません。春になると気温も水温も上昇するため、比較的低温でも増殖できる藻類から増殖を開始します。そのトップバッターがケイ藻なのです。

今は夏真っ盛りです。暑さに強い藻類相に変化しています。みなさまも藻採取サンプリングに繰り出してみてはいかがでしょう?くれぐれも、熱中症にはご注意下さいね。


参考資料
Ussing, A. P., Gordon, R., Ector, L., Buczkó, K., & VanLandingham, S. L. (2005). The Colonial Diatom” Bacillaria Paradoxa”: Chaotic Gliding Motility, Lindenmeyer Model of Colonial Morphogenesis, and Bibliography, with Translation of OF Müller (1783),” About a Peculiar Being in the Beach-water”(Vol. 5). Gantner.
Bacillaria paxillifer (O.F.Mll.) Hendey
井上勲 (2007). 藻類 30 億年の自然史. 東海大学出版.