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スピルリナの持つ7つの効能 

スピルリナの持つ7つの効能 

2010年から現在に至るまで、私の所属する(株)ちとせ研究所ではスピルリナの研究開発を継続し、国内唯一の生食タイプのスピルリナを生産してきた。

私自身も静岡県の掛川市でスピルリナの培養に携わり、生スピルリナの生産に向けて注力してきた。今では、掛川でのスピルリナ生産が学生時代のバドミントンに次いで私の第二の青春になっている。

真夏の強い紫外線を物ともせず、たくましく増え続けるスピルリナ。その強さのもととなるのは、高い抗酸化力や生理活性物質などスピルリナ自身が産生する有効成分である、と私は考えている。

これまでにも、藻ディアでは度々スピルリナの話題を取り上げてきた。




上記記事と重複するところもあるが、改めて、スピルリナとは何かを簡単に紹介する。

スピルリナは、藍藻類に属する全長0.3-0.5mmの螺旋状の微細藻類で、35 億年前に地球上に誕生し、マヤ文明の時代から人々の貴重な栄養源の1つとして世界中で食されてきたという長い歴史を持つ。また、ビタミン・ミネラル・タンパク質などの 5大栄養素をはじめ、食物繊維、抗酸化作用を示す植物性色素など、実に 60 種類以上の栄養素をバランス良く含んでいる。国連機関やNASAからも注目を集めており、近年では「スーパーフードの王様」としても広く知られている。

今回は、こうした豊富な栄養素を持つスピルリナがヒトの健康に寄与する効果について、これまでに発表されている研究成果を下記にまとめる。

1.抗酸化作用

酸化の影響

生体内で活性酸素やフリーラジカルが過剰に生じると、体内の酵素、脂質、遺伝子を攻撃し、結果的に老化・癌・動脈硬化など多くの疾患をもたらす原因となる。こうした酸化ストレスに対する防御システムが、抗酸化酵素などの抗酸化物質であり、体外から取り入れる抗酸化物質にはビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、グルタチオンなどがある。

酸化に対するスピルリナの効果

35億年前に地球上に誕生したスピルリナは、強力な紫外線から身を守るために、抗酸化物質を作り、身を保護してきた。そのため、抗酸化作用を持つフィコシアニン、クロロフィル、カロテノイドを豊富に含んでいる。試験管内の試験においては、スピルリナから抽出されたセレン含有フィコシアニン、市販のスピルリナ製剤に、抗酸化活性があることが分かっている。一方、ヒトに対する研究では、酸化ストレスと関係する慢性閉塞性肺疾患患者や2型糖尿病患者にスピルリナを投与したところ、各患者の抗酸化酵素の活性化や酸化的損傷のマーカーの減少が確認されている。

2.血圧調節作用

高血圧とは

日本における高血圧症の患者は4,300万人と、最も患者数の多い生活習慣病である。高血圧症とは、血管の中を流れる血液の圧力が強くなり続ける状態であり、進行すると血管壁の弾力性やしなやかさが失われて血管壁に傷が生じ、この傷に後述のLDLコレステロールが沈着すると動脈硬化が促進される。また、放っておくと脳卒中や心筋梗塞の発生に繋がるケースがあるなど、高血圧は重大な病気を引き起こす元凶である。高血圧症のその背景には、遺伝的体質に塩分の過剰摂取・肥満・飲酒・その他の生活習慣要因が複合的に重なっていると考えられる。

高血圧に対するスピルリナの効果

血圧に対するスピルリナの効能を考察した研究では、「1日1gのスピルリナは血圧に対して効果が見られないが、1日4.5gを接種することで、正常な血圧レベルまで血圧を低下させる」ことが示されている。

3.コレステロールの調節

コレステロールとは

血液中のLDLコレステロール(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク/通称 悪玉コレステロール)が増え過ぎると、血管壁に付着し、且つ酸化することで過酸化脂質となる。その蓄積により血栓ができ、動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や狭心症・脳梗塞などの動脈硬化性疾患を誘発させる。動脈硬化性疾患は、3大死因の心疾患や脳血管疾患と関係しているため、LDLコレステロールの値を減らすことは、長寿にとって重要である。一方でHDLコレステロール(High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク)は、増え過ぎたコレステロールを回収し、さらに血管壁に溜まったコレステロールを取り除き、動脈硬化を抑制する働きがあるため、「善玉コレステロール」といわれている。LDLコレステロール(=悪玉コレステロール)を減らし、HDLコレステロール(=善玉コレステロール)を増やすことが、上述した疾病の予防となり得る。

コレステロールに対するスピルリナの効果

スピルリナとコレステロールに関する研究では、
「脂質異常症の患者に1日1g投与したところ、LDLコレステロールが16%減少した」
「Ⅱ型糖尿病患者に1日2gのスピルリナを投与したところ、HDLコレステロールに対するLDLコレステロールの割合が減少した」
「健常者に1日4.5gを投与したところ、HDLコレステロールが上昇し、LDLコレステロールが減少した」
という結果が出ており、いずれもスピルリナの優位性が示されている。

4.血糖コントロール効果

糖尿病とは

糖尿病は、インスリン(ホルモン)の不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働きが低下して、高血糖が慢性的に続く病気である。日本においては、Ⅱ型糖尿病(遺伝的要因に過食や運動不足などの生活習慣が重なって発症)が多く、国内で疑いがある人は成人の6人に1人で、約1,870万人に上るといわれている。また、自覚症状の無いまま重篤な合併症が進展するのが特徴で、網膜症・腎症・神経障害の三大合併症のほか、動脈硬化が進行することにより、心臓病や脳卒中のリスクが高まることがある。生活習慣の改善により糖尿病を発症する手前で防ぐことや、発症後の血糖値コントロールによって合併症の発症をくい止めることが重要である。

糖尿病に対するスピルリナの効果

これまでに、ラットを用いた研究では「10mg / kgのスピルリナがグルコースレベルを低下させ、インスリンをわずかに上昇させる」という結果が報告されており。2型糖尿病患者を対象とした研究では「1日2gのスピルリナが血糖値の著しい低下をもたらした」という報告がある。

5.アレルギーに対する効果

アレルギー患者について

50年前にはアレルギーの症状はほとんど見られなかったが、厚生労働省の調べによると、現在日本には喘息の総患者数が110万人、鼻炎の総患者数が70万人いる。また食物アレルギーを有する乳児が10%いることを併せると、世界的に見て日本はアレルギー大国であり、今後も増加が予想されている。

アレルギーに対するスピルリナの効果

アレルギー性鼻炎患者を対象とした研究では、スピルリナを摂取したグループは未摂取のグループに比べ、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、かゆみなどが優位に改善した。同じく、アレルギー性鼻炎の患者に毎日スピルリナを投与したところ、末梢血単核細胞におけるインターロイキン-4のレベルが優位に減少し、アレルギー性鼻炎に対するスピルリナの防御効果が実証された。

6.抗ウイルス効果

ウイルスに対するスピルリナの効果

スピルリナから水抽出された硫酸化多糖(カルシウム・スピルラン Spirulan)は、はしかウイルス、インフルエンザA型ウイルス及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスの試験管内における複製を阻害することが分かっている。また、スピルラン Spirulanについては、ぜひ下記記事も参照頂きたい。

また他の研究では、スピルリナの冷水抽出物が、インフルエンザ感染マウスの細胞におけるウイルス量を減少させ、感染の初期段階でインフルエンザの予防に作用することが示されていた。ちなみに、スピルリナを飼料に混ぜることで、鳥インフルエンザウイルスの予防に繋がる可能性を示唆している論文もある。

7.抗癌作用

癌に対するスピルリナの効果

細胞や動物の試験において、スピルリナの投与により癌の発生や腫瘍の大きさが減少したという研究結果が報告がされている。ヒトを対象としたものでは、口腔内の前癌病変が認められた患者約90名の半数に対し、スピルリナ1日1gを摂取する試験が行われた。その試験では、対象群(スピルリナ投与無し)の7%が口腔内の病変の完全退縮を示したのに対し、摂取した患者の45%の病変が完全退縮をした。一方で、完全退縮を示したスピルリナ摂取群が服用を中止すると、その半数が翌年に再び病変を発症したという研究結果があり、継続した摂取が鍵であるように思われる。

以上、7つの項目に対するスピルリナの効能を考察してきたが、他にも疲労回復、筋力の増加、腸内環境の改善の可能性*などの効能が報告されている。
*スピルリナにより乳酸菌の成長が促進され、ヒトの病原菌に対しての成長抑制効果が確認された

このように、スピルリナの効能を示した学術論文は数多くあり、今後も研究が続けられる中で新たな機能性の発見も期待できる。ただ、各研究成果を精査すると、「スピルリナを摂取しない対象区が不足していてデータとしては確実性に乏しい論文」や「試験管内の実験で完結しているためにヒトを対象とした追加の試験が必要な論文」等も見受けられた。一方で、効果が得られたと報告されている試験では、いずれもスピルリナの摂取が数ヶ月間行われていたという共通点があったため、健康のためにスピルリナを取り入れるのであれば、長く続けることが大事であると考えている。


参考資料
1.抗酸化作用
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18522403
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18398928
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4320919/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2788188/
2.血圧調節作用
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23754631
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2211748/
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/jsh2014_gen.pdf

3.コレステロールの調節
http://www.sageru.jp/ldl/knowledge/disease.html
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23754631
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12639401
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2211748/

4.血糖コントロール効果
http://www.tandfonline.com/doi/full/10.3109/14756360902827240
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12639401
5.アレルギーに対する効果
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18343939
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15857205
6.抗ウイルス効果
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8984158
https://www.nature.com/articles/srep24253.pdf
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1876619616000346
7.抗癌作用
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19432881
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2695150/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8584455

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