今回紹介する藻類はとてもマニアックな藻類です。クロレラにとても近しい親戚で、藻類では非常に珍しい出芽をすることで分裂増殖します。
藻ガール尾張が大学院時代に細胞分裂の研究をしている時に偶然みつけた奇跡の写真をご紹介します!
●分類:真核生物>アーケプラスチダ>緑藻>トレボキシア藻綱>クロレラ目>クロレラ科
●生息:マニアック過ぎて不明
●体長/形態:直径約1 µlの単細胞球状藻類。細胞内には葉緑体と核が1個ずつ存在し、細胞内の多くを占める。この特徴から細胞分裂の研究に適している。細胞外には多糖質をまとっている(写真は多糖層をわかりやすくするため培養液に墨汁を溶かしたサンプル)。
●レア度:マニアック過ぎて不明
マルバニアの分裂様式は藻類では珍しい出芽型です。
M. geminataのFE-SEM写真、尾張2008
写真左a-eは正常なマルバニアの分裂の様子です。1つの細胞の、写真の向かって左側の領域から、右側にぷっくりと成長していることがわかります(写真左a-d)。やがて完全に切れ目が入り2つの細胞に分裂します(写真左e)。写真の向かって左側の領域は「母細胞」、右側の出芽してくる領域は「娘細胞」といいます。
この写真で観察している細胞表面のざらざらしたものは細胞壁です。マルバニアの出芽型分裂ではその都度細胞壁が作られますが、新たに成長する際に自然と母細胞壁ははがれるのが一般的です。そんな中、成長や分裂中に母細胞壁がはがれなかった細胞を発見しました!それも母細胞壁の周りにも2枚の細胞壁があります。生物学の専門用語としてはないですが、祖母細胞壁、曾祖母細胞壁が残存していた、ということです。この細胞の写真から娘細胞は同じ側に出芽することがわかります。
母細胞壁が開裂しない異常な分裂細胞の写真ですが、非常に珍しいショットだったので論文や植物細胞形態学の写真集に掲載されました!
大学院時代(修士課程)の筆者 @研究室の培養庫
参考資料
Yamazaki, T.*, Owari, S.*, Ota, S.*, Sumiya, N., Yamamoto, M., Watanabe, K., Nagumo, T., Miyamura, S., & Kawano, S. (2013). Localization and evolution of septins in algae. The Plant Journal, 74(4), 605-614. *These authors equally to this work.
Yamamoto, M., Owari, S. & Kawano S. (2014). Great-grandmother, grandmother, mother, and daughter cell walls during budding in the green alga Marvania geminata. Atlas of Plant Cell Structure ,142-143.
尾張智美 (2008)、『トレボキシア藻綱の栄養条件と分裂様式を規定する細胞壁とセプチンホモログの局在』、東京大学大学院新領域創成科学研究科 修士論文
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