再生可能エネルギーとして有望視されている藻類バイオ燃料。安価に、そして大量にオイルを生産するために不可欠なのは、「高増殖性」と「高油脂生産性」の2つの要素を両立する藻類株の開発だ。

窒素などの栄養素が欠乏した条件下で藻類を培養すると、油脂生産量を増やすことができる。しかし、窒素欠乏下では光合成の阻害が起こり、藻類の成長が鈍化することで、最終的には油脂生産量が落ちてしまう。「高増殖性」を保ちながら「高油脂生産性」を達成する手法の開発は、長年の課題とされてきた。

そんな中、話題の「ゲノム編集」技術を用いた注目の研究成果が2017年6月19日に発表された。研究結果は同日にジャーナルNature Biotechnologyに掲載されている。

2009年以来、エクソンモービル社とSGI社は、従来型輸送燃料の代替物として、再生可能で温室効果ガス排出量の少ない藻類由来油脂の研究開発に協力してきた。

彼らが用いているのはナンノクロロプシス(Nannochloropsis gaditana)という、藻類バイオ燃料の生産において有望視されている微細藻類の一種。両社は、藻類の増殖阻害を起こさずに糖質及びタンパク質成分を脂質へと変換し、なおかつ蓄積させることを大きな目標としてきた。

SGI社の研究員は、RNA-seq解析を用いた窒素欠乏条件下で脂質生産を負に制御する転写因子を20個同定。その中の真菌Zn(II)2Cys6ホモログをコードする遺伝子を、藻類の炭素から脂質への変換を微調整できる遺伝子スイッチとして特定した。これにより、ナンノクロロプシスの油脂含有量を野生型の20%から40-55%まで向上することに成功したとのことだ。

ナンノクロロプシスは、過去にも油脂生産性を高めるため変異育種などの手法を用いたいくつかの研究報告がある。しかし、長年課題となっていた「高増殖性」と「高油脂生産性」が両立する株開発の成功には至っていなかった。

今回発表されたエクソンモービル社らの研究は、通常条件下で藻類の生育を維持しながら、油脂含有量を倍にすることを達した点が素晴らしい成果だと考える。伝統的な変異育種の手法と併用すると、将来の商業生産に向けた有望な株の取得が期待できるだろう。

一方で、近年話題のゲノム編集技術を使って開発した生物が、遺伝子組換え生物(GMO)の規制対象になるかどうかについて各国で検討が行なわれている。

米国農務省(USDA)は2016年4月に、遺伝子編集ツールCRISPR–Cas9で遺伝子を操作したマッシュルーム(ツクリタケ)のケースに対して、GMOの規制対象とはせず通常の作物として扱うことを決定したという希望の持てるニュースがある。日本も基本的にアメリカと同じスタンスになるだろうと見られているが、EUの規制ルールは依然として不明のままだ。

今回紹介したエクソンモービル社らのように、ゲノム編集技術を使って開発された藻類株が商業利用できる日は、果たしてやって来るのだろうか。


参考資料:
I. Ajjawi, et al., Lipid production in Nannochloropsis gaditana is doubled by decreasing expression of a single transcriptional regulator. Nat Biotechno 2017 Jun 19. doi: 10.1038/nbt.3865.