今年の夏、長崎県で赤潮が大量発生し、トラフグやハマチなどの養殖魚52万匹以上が死に、被害額が5億円を超えたというニュースがあった。


また2010年には、鹿児島、熊本、長崎の3県で計54億円の赤潮被害が発生している。

赤潮被害は日本に限ったものではなく、2016年にチリの養殖場では、2,300万匹ものサケが死に、損害額は1,000億円に達した。また、お隣の韓国でも、2013年に養殖場にて1,310万匹が命を落とし、9億円近く損失が出ている。

今回は世界で大きな被害をもたらしている赤潮について、取り上げていきたい。

赤潮とは

赤潮とは、水中で藻類などの微小な生物が異常に増殖し、藻の色により海水の色が変わる現象である。藻が産生するカロテノイドなどの色素によって海が赤く染まることが多いため、一般的に「赤潮」と呼ばれているが、地域によって呼び名はさまざまである。赤潮発生のメカニズムは完全に解明されていないが、主な要因として、生活排水や工業排水から、窒素やリンなどの栄養素が湖や海などに供給されることで、藻が増殖するとされている。

赤潮の原因となる生物としては多くの種が知られており、珪藻、渦鞭毛藻、ラフィド藻、ハプト藻などの藻類や、夜光虫*が含まれる。こうした藻の中には、毒を産生するものがあり、それにより魚介類や水生生物、人が死滅することがある。また、藻の死骸の分解時に、バクテリア等が酸素を大量消費し、酸素濃度が低下することによる魚の窒息死や藻がエラに詰まることによる窒息死も発生している。
*夜光虫については下記記事も参照ください

人への影響

赤潮が人の健康へ与える影響は、大きく分けて以下の2種類がある。

①藻が産生する毒を、水道水を通して摂取する場合

1996年ブラジルで、アオコが発生する水源を水道水に利用していた病院で、患者60名以上が死亡する事故が発生した。このような事件の発生もあり、WHO(世界保健機関)は、ミクロシスチンの暫定基準値を1 μg*/L程度とした。*1mgの1,000分の1

上の写真は、2014年に米五大湖の1つであるエリー湖にて藻が大量発生した様子だが、水道水に藻が産生する毒素 ミクロシスチン(フグ毒に匹敵)が検出されたため、エリー湖の水を水道水として利用していた40万人が一時的に水道水を利用できなくなった。

②貝等が蓄積した毒素を食べる場合

二枚貝は藻類などをエラでこし集めて餌としているが、有毒な藻類が発生すると、二枚貝は体内にその毒を蓄積する。日本国内では「麻痺性貝毒」と「下痢性貝毒」が代表的であるが、出荷される商品にはそれぞれ規制値が定められている。そのため、毒化した貝は出荷規制されて市販されることはないが、潮干狩り等で自家用に採った貝は、規制の対象には入っていない。潮干狩りの際は、念のため各都道府県の水産課や水産技術センターなどが貝毒の発生状況をHPで発表している場合があるため、貝毒発生の情報を確認することをおすすめする。

過去には、潮干狩りで捕られたアサリに毒があり、大規模な食中毒で185名の死者が出たこともあるため、注意が必要である。ちなみに、アサリ毒の原因は、渦鞭毛藻説や酵素説があるが、詳しくは分かっていない。

赤潮への対応策

日本だけでも、赤潮により毎年億単位の深刻な被害が出ており、早急に対応すべき問題であることは間違いない。一方で、世界中で困惑している赤潮問題に終止符を打つ策を見出すことができれば、多くの人を救うことができる。

赤潮の原因の1つであるリンは、あと300年で枯渇するといわれている。また現在、採掘されたリンの80%が化学肥料に使用されているため、リンの枯渇は食糧危機を引き起こすと考えられている。特に日本は、必要なリン資源を殆ど全て輸入に頼っているため、今のうちにリンを回収できる技術の確立が必要である。一方、リン鉱石輸入量の4~5割に相当するリンが下水道に流入するが、回収・再資源化されるリンはその1割程度である。回収されない9割のリンをいかに回収できるかが、赤潮問題や資源枯渇問題の鍵になるのではと考えている。

最後に、衝撃的な写真を一つ。これは、中国山東省の青島市にある海岸の写真である。2008年以降、アオサが約9,000haにわたって海岸を占拠し、除去の際には2000隻以上の船が投入された。陸と海から7万トン以上のアオサを回収したとのことだが、増え続けるアオサに手が負えないようである。

このような大発生する藻を有効活用したサンダルや、藻類を利用した排水処理についての記事を、これまでModiaでは取り上げてきた。併せてぜひ読んでいただきたい。



参考資料
・「アオコの有毒物質を探る
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/52/52.pdf
・「枯渇リン資源の循環による自給体制の構築~生命の栄養素の管理をめざす国内外の動き~
https://www.leio.or.jp/pub_train/publication/tkj/tkj65/tkj65-2.pdf