先日こちらの記事でも触れたが、米国で2010年から2016年までに行われた藻類研究の結果から明らかとなった各要素技術に対する課題が『National Algal Biofuel Technology Review』にまとめられている。このレビューでは研究課題を3つの大きな分野(原料生産、変換、社会基盤)に分類し、各分野の中で工程順に区切って課題を整理している。

米国はこのような体系立った課題の整理と共有の仕組みが非常にうまい。この整理と共有によって、多くの藻類研究者が各工程に現在どういった課題があるのかが把握でき、新しいアイデアや技術をもっている研究者が参入できるようになるのだ。このような仕組みについては日本も積極的に見習いたいところである。

今回は米国でまとめられた課題について、各分野の工程ごとに紹介していきたい。

原料生産分野(バイオマス生産)

藻類生物学

・藻類基礎生物学のさらなる理解。
・全既知種における藻類データベースの構築(種、タンパク質、遺伝子、発現遺伝子)。
・データベースのオープンアクセス化、研究者間のデータ共有化、研究トレンドの共有化。
・有望生産株への外来遺伝子発現のための分子生物学的手法の開発。
・屋外池生産管理に関する理解(生態系構築、捕食者把握、クラッシュ現象解明など)。
・遺伝子組み換えに対する安全性対策、管理体制のさらなる理解。

微細藻類培養

・培養動態、培養安定性のさらなる理解(作物保護、栄養添加、栄養制限など)。
・ベンチスケールから実証へのスケールアップ化時のデータ相関性についての改良。
・生産性解析における測定基準の統一。
・藻体生産にかかる持続性及び資源経済性の理解(水資源、栄養素、各再利用など)。
・工業レベルでの二酸化炭素利用するためのさらなる理解。

収穫・脱水

・工業レベルでの収穫、脱水、乾燥技術の開発。
・工業レベルでの収穫、脱水技術の経済合理性、必要エネルギー量、環境持続性の確認。
・長期間稼働を踏まえた上でのパフォーマンスの有効性の確認。
・収穫、脱水の影響について種特異的な効果のさらなる理解。

変換分野(燃料化)

抽出・分離

・抽出技術を工業スケールにした時の経済性とシステムに与えるインパクトの調査。
・最終生産物に対する原料組成の影響の調査。
・工業スケールにおける既存及び新抽出技術の比較試験。
・大規模スケールアップした時の水管理、副次反応、作業温度、圧力などの影響チェック。

燃料変換

・工業スケールでの最適変換効率の探索。
・工業スケールでの燃料回収率の最適化。
・すべてのスケール段階における燃料会得率の確認。
・工業スケールにおける既存及び新抽出技術の比較試験。
・工業スケールでの全行程の変換エネルギー、排ガス量、夾雑物の最小化に関する試験。
・種特異的な変換技術、変換制限に対するさらなる理解。

残渣

・残渣からの高付加価値物質の同定と評価(飼料、肥料、バイオプラ、界面活性剤など)。
・残渣からの有価物の抽出と回収技術の最適化。
・応用開発を進めるための、質と安全面からの試験を含んだ市場調査。

社会基盤分野(インフラ整備)

物流と燃料利用

・藻類バイオマス、中間物質、燃料、派生商品に対する貯蔵や運搬方法。安定性などの把握。
・工場設置場所に合わせた物流エネルギーやコストの最適化
・規制及び消費者からの利用条件の遵守(例:エンジンパオーマンスや燃料適合性など)

資源と場所

・資源循環性を含む、藻類バイオマス生産に影響する種々の要因を統合させたモデルの作成。
・資源の特徴及び要求性をシュミレーションするための手段と解析技術の標準化。
・二酸化炭素固定と微細藻類バイオマス生産に関する調査。
・塩濃度バランス、エネルギーバランス、水、栄養素のリサイクル、温度管理に関する調査。
・二酸化炭素排出及び排水処理プラントと微細藻類生産施設の併設に関するさらなる理解。

 

これら課題の抽出と整理に合わせて、得られた知見を踏まえた新しい工程モデルとロードマップが作成されている。2010年ロードマップと比較して、乾燥工程が簡略化され、各項目で目指すべき目標数値が具体的に設定されているのが特徴である。

新しいモデル工程と要素技術(National Algal Biofuel Technology Review 2016より)
2010年のロードマップで提案された生産から油脂抽出までの一貫工程の更新版となる。
各要素技術の進捗が反映され、工程ごとの目標数値が設定されたことでより具体的なものとなっている。

次回はこの2016年の藻類研究ロードマップと、その前身となる2010年のロードマップに基づき、米国DOEの予算下で進められた各プロジェクトの概要についてご紹介したいと思う。