第2回は『アナベナのぬいぐるみ』です。前回のユーグレナと同じように、生物の同定ポイントを押さえた良いぬいぐるみです!

藻類商品vol.02『アナベナのぬいぐるみ』


【商品名】Algae(Anabaena)
【製造者】GIANTMICROBES, Inc.
【販売国】イギリス ※アメリカ等に支店あり。
【価格】£8.95
【原産国】中国
【サイズ】長辺21 cm、短辺6 cm
【URL】https://www.giantmicrobes.com/uk/products/algae.html

この商品の藻類は?

この商品のモデルとなった藻類は、藍藻(シアノバクテリア)のアナベナ(Anabena)です。世界中の淡水環境に見られるアナベナは、アオコの代表種の一つです。
●学名:Sphaerospermopsis sp.(Basionym: Anabeana sp.)
●分類:原核生物>真正細菌>藍藻綱>ネンジュモ目>アファニゾメノン科>スファエロスペルモプシス属
※近年の系統分類学では、アナベナは改変されています。詳細は後半に解説します。

この商品のポイントはここ!

(1)青緑色の細胞が並ぶ形状、トリコーム

藍藻や緑藻には、緑色の細胞が一列に並んだ糸状体の藻類が存在します。構成している主たる丸くて小さな細胞のことを栄養細胞といいます。しかしこのぬいぐるみでは、丸く小さな緑色の栄養細胞の他に、丸く大きな灰色の細胞の2種類の細胞が連続的に連なっています。緑色も、例えばユーグレナのぬいぐるみような緑色ではなく、青みがかった青緑色をしています。これは、青色色素フィコシアニンを光合成色素にもつ藍藻の、ネンジュモ目の特徴です。藍藻の糸状体の形態を特にトリコームといいます。

(2)灰色で大きな細胞、アキネート

トリコームの構成細胞の丸くて大きな灰色の細胞は、アナベナの耐久胞子でアキネートと呼ばれています。栄養細胞が大型化したもので、貯蔵物質を蓄積する役割を担います。光合成を行わないため光合成色素が薄いのが特徴です。

(3)一つだけ目をつぶっている小さな細胞、ヘテロサイト

小さくて丸い緑色の細胞には、よく見ると目を開いている細胞に混じり、目をつぶっている異質な細胞が1つあります。これはヘテロサイト(heterocyte、異質細胞)と個人的に判断しました。ヘテロサイトは栄養細胞から分化した、窒素固定に特化した細胞です。アキネートと同じく光合成を行わないため光合成色素が薄いのが特徴ですが、このぬいぐるみでは栄養細胞と同じ緑色なのが残念です。

(4)広義のアナベナ、本当はスファエロスペルモプシス属

古くからアナベナ属としてまとめられてきた藻類は、現在アナベナ属(Anabaena)、トリコルムス属(Trichormus)、ドリコスペルマム属(Dolichospermum)、スファエロスペルモプシス属(Sphaerospermopsis)の4属に分けられています。これからも、4属とも合わせて広義的にアナベナという名称が使用されていくと思いますが、このぬいぐるみの属はどうでしょうか?
新しい分類は、トリコームの中でアキネートが異質細胞に対してどのような位置に発達するか、トリコームの形状、アキネートの形状、加えて遺伝子情報などから4つの属に分けられています。

1.アナベナ属(Anabaena).2.トリコルムス属(Trichormus).3.ドリコスペルマム属(Dolichospermum)4.スファエロスペルモプシス属(Sphaerospermopsis

このぬいぐるみは、アキートが球状である点アキネートが栄養細胞とヘテロサイトよりも大きい点アキネートとヘテロサイトが隣接している点から、スファエロスペルモプシス属で間違いないでしょう。

今回のぬいぐるみも、属の同定ができるくらい再現性の高いぬいぐるみでした。


アナベナのぬいぐるみはアメリカおよびヨーロッパの安全基準を満たされている商品です。しかし、本当のアナベナの一部には、神経毒素アナトキシン、肝臓毒素ミクロキスチンが含まれていますので、お子さんには正しい知識を教えてあげてください。


参考資料
新山優子, & 辻彰洋. (2012). 藍藻ネンジュモ目の浮遊性種の分類学的変更と類似種の比較. 陸水学雑誌, 74(3), 153-164.
https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/aoko/aokocontents/nosto.html

顕微鏡写真
Werner, V. R., Laughinghouse IV, H. D., Fiore, M. F., Sant’Anna, C. L., Hoff, C., de Souza Santos, K. R., … & Echenique, R. O. (2012). Morphological and molecular studies of Sphaerospermopsis torques-reginae (Cyanobacteria, Nostocales) from South American water blooms.