Modiaはこれまで数多くの藻類に言及してきました。
このコーナー『藻ガール尾張の藻類コレクション』では、それぞれの藻類にまつわるちょっとしたエピソードを紹介していきたいと思います。
記念すべき第1回は、Modiaでも度々取り上げられている『スピルリナ』です。
この『スピルリナ』、実は誤ってつけられた名前だったことをご存知でしょうか?
・分類:原核生物 > 真正細菌 > シアノバクテリア ※下図の系統樹もご覧ください!
・生息:アフリカ中部、中央・南アメリカのアルカリ性湖沼
・体長/形態:直径5~8µmの小さな円筒状の細胞が螺旋状に連なった形態で、全長は300µm以上にもなる。
・レア度:★★★☆☆
『スピルリナ』と皆さんが言っている藻の現在の学名は、アルソスピラ属の Arthrospira platensis です。どこにも『スピルリナ』とは入っていません。かつてはスピルリナ属の Spirulina platensis という学名だと考えられていて、属の名前を取って『スピルリナ』という名称で人々の社会に健康食品等として浸透していきました。
しかしその後、スピルリナ属に属するとみなされていた一群の藻類の中には、別系統のアルソスピラ属が紛れ込んでいることが分かったのです。紛れ込んでいた中に、『スピルリナ』も含まれていたのです。
少し学術的な話ですが、藻類における属の定義は、最初にその属が定義された藻類種に基づきます。そのため、スピルリナ属の中では新参者だった Spirulina platensis は、アルソスピラ属という別の属に移され、その学名は Arthrospira platensis と変更されたのです。
スピルリナとシアノバクテリアの系統樹/筆者作成
学名が Arthrospira platensis に変更された後、藻類学者の間ではもはや『スピルリナ』という呼称は使用されませんが、昔から広く人々に親しまれてきた『スピルリナ』という呼び名は、今後も長く愛され続けるでしょう。
参考資料
Vonshak, A. (Ed.). (1997). Spirulina platensis arthrospira: physiology, cell-biology and biotechnology. CRC Press.
Ballot, A., Dadheech, P. K., & Krienitz, L. (2004). Phylogenetic relationship of Arthrospira, Phormidium and Spirulina strains from Kenyan and Indian waterbodies. Algological Studies, 113(1), 37-56.
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