「植物以外の真核生物に存在する」とWikipediaにも記載されている『セプチン』が、植物で初めて、緑色植物の緑藻ナノクロリスで存在することが発見されました!セプチンは動物や菌類で分裂に必須のタンパク質で、植物には存在しないといわれています。

ナノクロリスはクロレラにとても近しい親戚で、大学院時代に同じく珍しい分裂様式をするマルバニアとともに研究していました。藻ガール尾張が苦楽を共にした藻類の1種であり、とてもマニアックな藻類です。

●学名:Nannochloris bacillaris
●分類:真核生物>アーケプラスチダ>緑藻>トレボキシア藻綱>クロレラ目>クロレラ科
●生息:マニアック過ぎて不明
●体長/形態:約1 µlの単細胞藻類。細胞内には葉緑体と核が1個ずつ存在し、細胞内の容積の多くを占める。この特徴から細胞分裂の研究に適している。
●レア度:マニアック過ぎて不明

植物の細胞分裂では細胞内部から細胞板が形成されることによって仕切りができ、2細胞に分裂します(細胞板形成型)。一方で、動物や菌類の細胞分裂は環状にくびれこんでちぎれるようにして2細胞に分裂します(環状収縮型)。高校の生物の授業で習った方も多いのではないでしょうか?

ナノクロリス(※)の細胞分裂は、始め1つの細胞が細長く伸張し、真ん中で環状にくびれこみ2つの細胞に分裂する環状収縮型分裂をします。このような分裂様式を二分裂型といい、分裂酵母の細胞分裂に似ています。ナノクロリスのように二分裂型に分裂する藻類はあまりいません。
※本記事では、Nannochloris bacillarisをナノクロリスと呼称します。Nannochloris bacillaris以外のナノクロリス属の種の細胞分裂は内生胞子形成型です。

植物であるはずのナノクロリスが、分裂酵母のような分裂をするのはどうしてなのでしょうか?

実は、植物の中でも、緑藻のなかで環状収縮型細胞分裂から細胞板形成型細胞分裂への分岐点があるのです。クロレラやヘマトコッカスは環状収縮型細胞分裂をしますが、アオミドロや車軸藻は細胞板形成型細胞分裂をします。陸上植物は全て細胞板形成型細胞分裂をします。

セプチンは、マイクロフィラメント(アクチン)、中間径フィラメント、微小管と並ぶ第4の骨格と言われており、動物や菌類では、細胞分裂の他にも樹状突起・軸索・鞭毛の形成など様々な生命現象に関与しています。植物にはないと公言されてるタンパク質なので、ナノクロリスにセプチンが存在すると知った時はとても驚きました。

現在の生物学は次世代シークエンサーの登場により、自分が研究している種がもつ遺伝子ライブラリーを容易に作成することができます。また、その他に多くの種の遺伝子ライブラリーも公開されています。どのような種がセプチン遺伝子をもっているのか、様々な生物グループでライブラリーを横断検索してみると、緑藻以外の藻類もセプチン遺伝子をもつことがわかりました。「植物以外の真核生物に存在する」と言われ、動物や菌類などオピストコンタ界の生物種ばかりで研究されてきたセプチンは、藻類を含めた原生生物に広く分布して、何らかの機能を有する可能性があります。

系統樹の青色の枝の生物グループがセプチン遺伝子をもっている(Yamazaki et al. 2013)

藻類では、今回ご紹介したような細胞分裂機構や、それ以外の機構についても、高等植物に比べると研究が進んでいません。だからこそ、藻類には未知の可能性があるのです!

 


参考資料
Yamazaki, T.*, Owari, S.*, Ota, S.*, Sumiya, N., Yamamoto, M., Watanabe, K., Nagumo, T., Miyamura, S., & Kawano, S. (2013). Localization and evolution of septins in algae. The Plant Journal, 74(4), 605-614. *These authors equally to this work.
Yamamoto, M., Nishikawa, T., Kajitani, H., & Kawano, S. (2007). Patterns of asexual reproduction in Nannochloris bacillaris and Marvania geminata (Chlorophyta, Trebouxiophyceae). Planta, 226(4), 917-927.
Adl, S. M., Simpson, A. G., Lane, C. E., Lukeš, J., Bass, D., Bowser, S. S., … & Heiss, A. (2012). The revised classification of eukaryotes. Journal of Eukaryotic Microbiology, 59(5), 429-514.
https://en.wikipedia.org/wiki/Septin
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E9%AA%A8%E6%A0%BC
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%BB%E3%83%97%E3%83%81%E3%83%B3