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藻ガール尾張の藻類コレクション vol.15 クレブソルミディウム

藻ガール尾張の藻類コレクション vol.15 クレブソルミディウム

暑くなってきましたね。涼しい木陰で休むとき、ちょっと木の幹をご覧ください。一息付きながら、藻ガール(藻ボーイ)気分を味わえます!木の幹に付着している藻類クレブソルミディウムを見つけに、皆さまも「藻探し」してみませんか?

●学名:Klebsormidium sp.
●分類:真核生物>アーケプラスチダ>緑藻類・車軸藻綱>クレブソルミディウムクレブソルミディウム
●生息:日本を含めアジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界中に生息。
●体長/形態:多細胞で付着部(仮根)のない非分枝糸状体を形成する。細胞壁に沿った帯状葉緑体をもち、不完全な筒状に細胞を取り巻く。一個のピレノイドをもつ。細胞中央には大きな液胞がある。
●レア度:★☆☆☆☆

クレブソルミディウムは糸状体の藻類です。水中でも見られますが、乾燥に強いため樹木の表面やコンクリート塀でも生育することができます。他の緑藻(Elliptochloris subsphaerica)と一緒に生育して、やや濃い緑色の毛羽立った付着物の様相をしています

クレブソルミディウムが木の幹に生えている様子(Holzinger & Karsten (2013)

乾燥している陸上で生育する藻類は、様々な生存戦略をとります。例えば地衣類は、菌類と共生することで生きています。クレブソルミディウムは他の生物の手を借りることなく、空気中の水分で生きています。このように、陸上で湿り気のない場所に成育する藻類を「気生藻類」と総称します。

水中で生活をしている藻類に比べて気生藻類の生態はあまり明らかにされていませんでしたが、1989年、すなわち平成元年に、気生藻類の中でも生育環境により特徴が異なることがわかってきたのです(Hoffmann 1989)。ここで、イシクラゲなどの土壌藻類、岩生藻類、洞窟藻類、氷雪藻、動物着生藻類、そしてクレブソルミディウムなどの植物着生藻へと分類がなされ、それぞれの研究が進めやすくなったのです。

気生藻類にかかわらず、新しい時代、令和の藻類研究がどのように発展していくのか楽しみです。応用面での藻類研究では、我々ちとせグループが大いに貢献できると考えています。

皆さま、藻類業界を盛り上げていきましょう!!

藻藻子(藻ガールの子供の愛称)の初藻探し


参考資料
Hoffmann, L. (1989). Algae of terrestrial habitats. The botanical review, 55(2), 77-105.
Holzinger, A., & Karsten, U. (2013). Desiccation stress and tolerance in green algae: consequences for ultrastructure, physiological and molecular mechanisms. Frontiers in Plant Science, 4, 327.
半田信司. (2002). 気生藻類, 堀輝三, 大野正夫, 堀口健雄編 「21 世紀初頭の藻学の現況」, 日本藻類学会, 山形.
http://protist.i.hosei.ac.jp/taxonomy/Chlorophyta/Ulvophyceae/Ulotrichales.html

顕微鏡写真
Klebsormidium bilatum Belgium“©Katz Lab/CC BY 2.0

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