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藻を「釣る」チンパンジー

藻を「釣る」チンパンジー

今回は、藻とチンパンジーの関係について、興味深く、かつ貴重な事例を発見したので紹介したい。

元々、野生のチンパンジーが様々な用途で道具を使用することはよく知られている。例えば、石を使ってアブラヤシの堅果を割ることや、樹の中のオオアリを枝で掘り出す事例が有名だ。

こうした中、昨年、ギニア北部の森林地帯Bakounに生息する野生のチンパンジーが、木の枝を使って渓流の底から藻類を釣って食べる様子が撮影された。この時収穫された藻は、Spyrogyra sp.と呼ばれる淡水性の微細藻類アオミドロの一種であった。アオミドロはタンパク質、淡水化物、ミネラル分を豊富に含むことから、チンパンジーはこれらの豊富な栄養分を得るために、繁殖する特定の期間に収穫したのだろうと推測されている。

まさに「百聞は一見にしかず」が文字通り当てはまるケースなので、ぜひ下記動画をご覧頂きたい。

この動画では収穫の動作の一部が切り取られているが、実際は短い場合では1分、長い場合は1時間以上も、チンパンジーは微細藻類の収穫に興じていたようだ。

これまで、水生植物を食する行動は5種類のチンパンジーでしか確認されておらず、その中でも「藻」の摂食行動に限ると、世界で2か所でしか確認されていない。ただ、それらはいずれも単独で収穫したものであり、今回のように「集団」で道具を用いて藻を収穫し、食す様子が確認されることは、非常に稀なケースであるようだ。

このような貴重な映像資料がクリック一つで見られることに感動を覚えるとともに、個人的には、動画を初見した際、原始人が登場する「even a caveman can do」シリーズの某CMを思い出した。

今回の場合は、「even Chimpanzees know!!」とでも言うのだろうか?


参考資料
・Boesch,C. et al., Chimpanzees routinely fish for algae with tools during the dry season in Bakoun, Guinea (2016)

この記事を書いた人

ちとせ研究所所属。東京大学農学部卒業後、アリゾナ大学生物システム工学科にて博士号を取得。その後同大学にて微細藻類バイオマス大量生産を目的としたフォトバイオリアクターの開発・研究に携わる。2015年、13年間の米国生活からとうとう帰国し、真面目に社会人化。光合成でモノをどんどん増やすことに興味のあるアンパンマンに憧れる中年。

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