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未来の生活を支える”藻類”プラスチック

未来の生活を支える”藻類”プラスチック

「1人 1日 約200g」

この数字は、日本人1人が1日に捨てるプラスチックの量である。プラスチックは石油を精製したエチレンやプロピレンなどからできているが、石油はこのまま使い続けると後50年ほどで枯渇するだろうと言われている。そのため、石油を原料としない「バイオプラスチック」が世界中で注目されている。

未来の私たちの生活を支えるバイオプラスチック

バイオプラスチックの原料となるのは、トウモロコシ等の穀物資源、サトウキビ等から取り出される糖類が主体である。バイオプラスチックの一種であるポリ乳酸(PLA)は、デンプンの発酵によってできた乳酸が化学反応することで精製される。一方で、トウモロコシやサトウキビを原料とすることは、有限な農場において人々への食糧の供給を減らすことにも繋がるため、農作物以外の原料を探索する研究も進んでいる。例えば、微生物による発酵やセルロース(食物繊維)を用いたバイオプラスチックの生産が試みられているが、中には、藻類を原料とした生産に着手した企業もある。米企業ALGIXは、藻類からプラスチック素材を製造することに成功し、同社の製品は包装材、園芸用資材、電子機器等に活用されている。また同社のグループ会社であるALGIX 3Dは、バイオプラスチックを用いた3Dプリンターの素材を取り扱っている(現在は販売を終了している模様[2019年6月現在])。

ALGIX | Algae Bioplastics

藻類を用いたバイオプラスチックへの注目

このようにバイオプラスチックに注目が集まる中、藻類を原料としたユニークなプラスチック製品を発見したので紹介したい。「Ooho」と名付けられたその製品は、ロンドンの学生達がペットボトルの廃棄量削減を目指して発明した、”食べられる”ボトルだ。この製品は、植物や海藻(褐藻)から抽出した天然素材で作られていて、4~6週間で分解される。そのため、従来のペットボトルと異なり、このまま土や海に捨てたとしても自然に分解される。また、ジェル状の膜で水を覆ってあるため、清潔な水を持ち運ぶことができ、且つOohoを割って中の水を飲むこと、そのままOohoを食べることも可能である。さらに環境に優しいことに、同じ量のプラスチックを作るのに対し、Oohoの製造に必要な二酸化炭素量は5分の1であり、エネルギーも9分の1で済む。是非とも下の動画でこのユニークな製品をご覧いただきたい。

Oohoを製造しているSkipping Rocks Labのホームページによると、現時点では残念ながらイベント等での小規模な販売のみで、一般流通はしていないようだ。今後、量産化が進み、日本でも気軽に手に入る日が来ることを待ち遠しく思う。

一方、日本国内でもバイオプラスチックを用いたユニークな事例がある。世界中の若手クリエーターを対象とした国際デザインコンペ「レクサスデザインアワード2016」において、寒天を梱包材に利用するというアイデアを手掛けた日本のグループがグランプリを受賞したのだ。寒天はもともと紅藻類(海藻)を原料としており、海に流れた場合も海洋生物に害を及ぼさないほか、土に混ぜることで土壌の保水力を高める素材として再利用できる。また発泡スチロールと同じく多孔的な構造であるため、効果的に衝撃を吸収でき、かつ軽量であるという特性も緩衝材として最適であり、将来梱包資材として広く使用される可能性は十分考えられる。コンペで受賞したメンバーの荒木氏は下記のように述べている。

「自然と相対するものとしてではなく、その境界が感じられないくらいに自然の循環に無理なく馴染んでくるようになると素敵ですね。さまざまなことにおいて、”循環している”ということが美しいと感じられる美意識や価値観が育まれた未来がくることを願っています。」

寒天プロダクトで、「レクサス デザイン アワード2016」グランプリ受賞した日本人ユニット「AMAM」 | FUTURUS(フトゥールス)

今回取り上げた「Ooho」や「寒天梱包材」の発明の素晴らしい点は、その創造性と、市場の商品に引け目をとらないデザイン性だ。資源の枯渇により私たちの生活が不便になるのではなく、逆に、サステナブルな素材を使用しながらも、これまでよりも心地よい生活ができる日が来ることを期待したい。


参考画像
・Oohoの開発企業Skipping Rocks Labより使用許諾
http://www.skippingrockslab.com/

参考資料
・世界のエネルギー事情
http://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/nowenergy/world_energy.html
・海や土に還る、「寒天」を使った梱包資材 – レクサスデザインアワード受賞者インタビュー
https://www.japandesign.ne.jp/interview/lda-2016-amam-01/

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