先日、Forbesで『藻類タンパク質が植物タンパク質マーケットを破壊するかも』という刺激的なタイトルの記事が出ていた。

Algae Might Be About To Disrupt The Plant-Based Protein Market

Triton is a company poised for disruption. The small San Diego based algae start-up is hitting all the right notes – plant-based, sustainable, synthetic biology – offering up what co-founder Miller Tran calls an “untapped well of proteins” that offers more than what’s now on the plant-based market.

この記事の中ではTritonという藻類ベンチャーの活動がピックアップされている。

TritonはChlamydomonas reinhardtiiと呼ばれる藻類を食品原料として展開しようとしているベンチャーだ。C.reinhardtiiはモデル藻類として藻類研究ではよく用いられている緑藻である。C.reinhardtiiは2018年1月にGRASGenerally Recognized As Safe)認証を取ったことで食品原料としての利用の道がひらけた。彼らはタンク培養(従属栄養)で緑と黄色の2種類のC.reinhardtiiを生産し、それを食品原料として使っていこうとしている。

緑と黄色の色の違いはクロロフィルの有無によるものだ。タンパク質含有量は約48%と大豆(38%)よリも高い。大豆と比べてリシン、メチオニンおよびトリプトファンなどの必須アミノ酸を有意に含み、不飽和脂肪酸(オメガ3,6,9)、βカロテン(ビタミンA)、鉄、カルシウムが含まれている。

最近では第10回BlueTechサミット会議の一環として、C.reinhardtiiを小麦粉がわりに使ったフルコース料理をランチとして提供し、Sustainable Seafood賞を受賞している。Forbesの記事もこのような藻類の一般食品化の流れを踏まえて書かれたものであろう。

また、今年10月にフランスで行われた2018 Protein SummitにおいてはKyanos Biotechnologiesが大賞を受賞した。Kyanos Biotechnologiesの詳しい技術情報はまだ載っていないが、窒素固定能を持つ藍藻を利用して空気からタンパク質を作り出す、というもののようだ。

Six lauréats internationaux pour le protein summit de Lille

De la spiruline fraîche à cultiver soi-même dans sa cuisine ( Alg & You,Toulouse) ; des chips à base de graines de lin ( Future Food, Ukraine) ; une alternative à la viande à base de soja fermenté ( Tempeasy, UK); des protéines de pois chiche utilisables dans le yaourt


彼らの使っている藍藻種はAphanizomenon Flos-Aquaeと呼ばれるもので、ヘテロシストと呼ばれる特殊な細胞によって大気中の窒素を取り込んで栄養源とすることが可能だ。A. Flos-Aquaeは『ブルーグリーンアルジ』という商品名で米国を中心にサプリメントとしても販売されている。Kyanosではリアクターを用いた大量培養系に目処がついたようで、2019年中までにAtran groupをパートナーとして最初の工業生産ユニットの建設を開始する予定ということだ。

窒素固定を行う藍藻を利用するアイデアは私も以前から何かに使えないかなと思ってはいたが、食用に使えるものがないからと思い込んで事業化が難しいと考えていた。しかし、A.Flos-Aquaeであれば食経験もあるし行けるのか、と今更ながら気づいた次第である。この方式はフランスだけでなく世界中でも応用できるアイデアになるだろう。

一方、政策がらみの動きでは、先月末にEU委員会がEU域内での植物性タンパク質(大豆、ヒヨコマメ、レンズ豆、菜種)の消費と供給を増やしていく、との発表を行った。この発表に対して、欧州藻類委員会(European AlgaeBiomass Association: EABA)および国際昆虫食糧会(International Platform of Insects for Food and Feed :IPIFF) が、この動きに連動させて藻類と昆虫も新タンパク質源としての開発も促進させるべきとの主張をしている。

‘Look beyond conventional protein sources’: Insect and algae groups call for recognition in EU protein policy

Last week, the European Union announced a new push to promote the domestic production and consumption of soy, chickpeas, lentils and rapeseed ​. However, the umbrella organisations representing the algae and insect production sectors, the European Algae Biomass Association (EABA) and the International Platform of Insects for Food and Feed (IPIFF), noted that these ‘new’ protein sources have been left off the EU’s agenda.

具体的には、藻類や昆虫といった新タンパク質源を扱う新興企業の育成に繋がるようなR&D基金設立を嘆願しているようだ。藻類と昆虫がタッグを組んでお願いする、という絵はなかなかシュールではあるが、弱者とはいえ共にインパクトは強いもの同士が手を組むことで社会からの注目度は上がることだろう。今回の嘆願の結果がどうなっていくか、EUのタンパク質政策の動向に引き続き注目していきたい。私の個人的な勘だと反映されていく可能性が高いと思っている。

タンパク質源としての藻類の話は今後も話題に上がっていくことが増えていくと予測されるため、今後もおいて行かれないよう適宜キャッチアップしていきたい。皆様も何か情報を見かけたら編集部までご一報いただければ嬉しい。

Modiaでは過去にもタンパク質関連の記事を紹介してきたので、ご興味あればこちらもあわせてお読みいただければと思います。

・タンパク質危機(タンパク質クライシス)に備え、老舗農業企業が藻類農業へ参入
・タンパク質生産の未来について -タンパク質危機(タンパク質クライシス)を解決する?藻とメタン資化菌
・「植物肉」が注目され資金が集まる本当の理由 -2050年の「タンパク質危機」を藻類培養が救う