先日、乾燥耐性と料理方法を紹介したイシクラゲ(詳しくはModia記事の『藻ガール尾張のわくわく藻探し -道端で発見!つかめる微細藻類「イシクラゲ」』をご覧ください)。今回の記事では宇宙との意外な関係をお伝えします。
●分類:原核生物>真正細菌>シアノバクテリア
●生息:日本を含め、世界中に分布。
●体長/形態:トリコームといわれる球状の細胞が数珠状に繋がっている細胞群を形成する。多量の細胞外多糖によりトリコーム同士が付着して塊となる。野外では、雨水等で膨潤すると握りこぶしほどの黒褐色の柔らかい塊になる。乾燥すると黒色で平な海苔のような板状になる。
●レア度:★☆☆☆☆
イシクラゲが分泌する細胞外多糖には、保水能力、強光阻害から細胞を守る抗酸化機能、日焼け止め機能があることが明らかにされています。加えて、極度に過酷な環境、例えばガンマ線、紫外線、重粒子線、高温(100℃)環境への耐性があることも示されています。
現在、NASAやJAXAなどの世界14機関で構成される国際宇宙探査共同グループが作成する国際宇宙探索ロードマップでは、火星の宇宙農業構想が提唱されています。そのなかで、火星の栄養のない無機物土・レゴリスを野菜が育てられる有機土壌にするために、保水力が高く、強光に強く、酸素を生成でき、食材にできるイシクラゲは最適です。つまり、宇宙農業の立役者としてこれ以上ない生物なのです。
イシクラゲが含まれるシアノバクテリアは、30億年前に酸素を作り出した地球の開拓生物として重要な役割を果たしました。そして今度は地球を飛び出して、新天地ならぬ新天星で大活躍するかもしれません。実際に、2006年、イシクラゲは国際宇宙ステーションに持ち込まれています。
今回は地球を飛び出し、宇宙レベルで藻類のお話をしました。私たちにとっては非常に遠い未来の話だと思いますが、藻類の活躍の場が無限に広がっていることを知っていただけると嬉しいです!
掌のイシクラゲに宇宙を感じる筆者
参考資料
Katoh, H., Furukawa, J., Tomita-Yokotani, K., & Nishi, Y. (2012). Isolation and purification of an axenic diazotrophic drought-tolerant cyanobacterium, Nostoc commune, from natural cyanobacterial crusts and its utilization for field research on soils polluted with radioisotopes. Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Bioenergetics, 1817(8), 1499-1505.
新井真由美(2013). 火星地下居住構想とラン藻の活用.International Journal of Microgravity Science Application, 30(2).105-110.
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