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米国の藻類燃料研究の変遷 part. 1 (2009~2014年度)

米国の藻類燃料研究の変遷 part. 1 (2009~2014年度)

先日、3回に渡り2009年度から現在までの『日本の藻類燃料研究の変遷』についてまとめた。



2010年、2016年の微細藻類研究ロードマップに基づき、米国の予算下で進められた(現在進行中も含む)主だったプロジェクトは全41にのぼる。各プロジェクトの概要を以下に紹介していく。

微細藻類燃料に関する米国グラント一覧表(2009〜2018)/筆者作成

今回 part.1では2009年度~2014年度に開始されたプロジェクトNo.1〜21の詳細を記す。

2009年度採択の助成金

1)Demonstrate the technical and economic feasibility of an algae-to-drop-in green fuels process that will form the basis for the development of a series of commercial scale biorefineries.

【概要】ニューメキシコ州のコロンブスに微細藻類の培養から原油生産までの統合デモンストレーションを行うための施設(グリーンファーム)の建設と実証を行う。本施設を建設するために、DOEから50百万ドルの資金援助および農水省(USDA)から54百ドルの融資保証を受けた。
【委託先】<企業>Sapphire Energy社
【期間】2009〜2015年
【費用】50百万ドル(DOE)、54百ドル(USDA)

2)Direct to Ethanol

【概要】フロリダ州リー郡において、微細藻類からのエタノール生産を実証するためのバイオリタクターを建設し、年間100,000ガロンのバイオエタノールの生産を目指す。必要な資金25百万ドルをDOEから調達し、地元の雇用を促進するということでリー郡からも10百万ドルの支援を受けた。
【委託先】<企業>Algenol Biofuels社
【期間】2009〜2015年
【費用】25百万ドル(DOE)、10百万ドル(リー郡)

3)SzIB : Solazyme Integrated Biorefinery

【概要】ペンシルバニア州で従属栄養型微細藻類を用いたバイオディーゼルに変換することができる藻類由来の油の生産を目的とするための施設建設資金の支援を受けた。年間300,000ガロンの生成された藻油の生産を目指す。
【委託先】<企業>Solazyme社
【期間】2009〜2014年
【費用】21.8百万ドル

2010年度採択の助成金

4)NAABB : National Alliance for Advanced Biofuels and Bioproducts.

【概要】米国内の約40のメンバーで構成された大型国家コンソーシアム。微細藻類燃料生産にかかる主要技術の基礎開発を行うことを目的とする。開発分野は大きく3つに分けられている。1つ目は培養技術及び微細藻類種の品種改良、2つ目は収穫と抽出工程の開発、3つ目が加工と変換工程の開発となる。
【委託先】
<公的機関>The Donald Danforth Plant Science Center、Los Alamos National Laboratory*(中核機関)、Pacific Northwest National Laboratory、Idaho National Laboratory、National Renewable Energy Laboratory、United States Department of Agriculture – Agricultural Research Service <大学>ブルックリン大学、クラークソン大学、コロラド州立大学、アイオワ州立大学、ミシガン州立大学、ニューメキシコ州立大学、ノースカロライナ州立大学、テキサスA&M大学、アリゾナ大学、カルフォルニア大学ロサンゼルス校、カルフォルニア大学リバーサイド校、カルフォルニア大学サンディエゴ校、ペンシルベニア大学、テキサス大学、ワシントン大学、ワシントン州立大学、セントルイスワシントン大学 <企業>Albemarle Catilin社、Diversified Energy社、Eldorado Biofuels社、Genifuel社、Cellana社、Inventure社、Kai BioEnergy社、Palmer Labs社、Phycal社、Reliance Industries Limited社 (インド)、Pan Pacific社 (オーストラリア)、Solix Biosystems社、Targeted Growth社、Terrabon, Bryan社、UOP a Honeywell社、Valicor社
【期間】2010〜2013年
【費用】49百万ドル

5)Large-scale Production of Fuel and Feeds from Marine Microalgae.

【概要】海洋微細藻類種(Nannochloropsis sp.)を用いて燃料生産および飼料生産の実証を行うコンソーシアム。新規な微細藻類の収穫技術、パイロット規模の培養試験ベッドの建設、燃料抽出後残渣の養殖用の飼料としての開発をCellana社が中心となってハワイ州で行われた。
【委託先】<公的機関>フランス航空宇宙工業会(フランス) <大学>ノードランド大学(ノルウェー)、コーネル大学、南ミシシッピ大学、デューク大学、コーネル大学、サンフランシスコ州立大学、ハワイ大学 <企業>Cellana社*(中核機関)
【期間】2010〜2013年
【費用】9百万ドル

6)SABC Project: Biochemical Conversion of Algal Biomass and Fuel Testing.

【概要】微細藻類バイオマスを酵素によって液体燃料へと変換するための実証および生産された液体燃料が石油を代替できるかを検証するためのコンソーシアム。アリゾナ州立大学を中心とするコンソーシアムで行われた。
【委託先】<公的機関>National Renewable Energy Laboratory、Sandia National Laboratories、Colorado Renewable Energy Collaboratory <大学>アリゾナ州立大学*(中核機関)、ジョージア工科大学、コロラド鉱山大学 <企業>SRS Energy社、Novozymes社、Lyondell Chemical社
【期間】2010〜2013年
【費用】6百万ドル

7)CAB-comm: Consortium for Algal Biofuels Commercialization.

【概要】屋外培養を念頭に置いた微細藻類培養における外敵(カビ、ウィルスなど)への防御対策、栄養素のリサイクルモデリング、外敵防御能および副産物生産性向上のための遺伝子組み換え技術の開発を行うためのコンソーシアム。
【委託先】<公的機関>Scripps Institution of Oceanography <大学>カリフォルニア大学サンディエゴ校*(中核機関)、カリフォルニア大学デービス校、ネブラスカ大学リンカーン校、ラトガース大学、カルフォルニア大学、ジョンホプキンス大学 <企業>Sapphire Energy社、Life Technologies社、Energy General社、Atomics Life社、Sempra Energy社、Chevron社、Praxair W.R.社、Grace社
【期間】2010〜2013年
【費用】9百万ドル

2011年度採択の助成金

8)Developing a New Generation of Animal Feed Protein Supplements.

【概要】微細藻類バイオ燃料の副生成物として微細藻類からタンパク質補助食品を開発するために、家畜飼料の栄養的および経済的価値を実証することを目的とする。資金援助は、米農務省(USDA)の国立農業農業研究所(NIFA)および米国エネルギー省(DOE)のバイオマス研究開発イニシアチブを通じて提供された。
【委託先】<企業>Cellana社
【期間】2011〜2014年
【費用】5.5百万ドル

2013年度採択の助成金

9)Wastewater Reclamation and Biofuel Production Using Algae.

【概要】排水を用いてレースウェイ型ポンドでの微細藻類燃料生産を目指す。排水を処理しながら微細藻類を培養しながら、水と栄養素の効率的なリサイクルを行い、なおかつ燃料生産につなげる。
【委託先】<公的機関>Pacific Northwest National Lab、Sandia National laboratory <大学>カリフォルニアポリテック州立大学*(中核機関)、アリゾナ州立大学(ATP3) <企業>MicroBio Engineering社
【期間】2013〜2016年
【費用】1.3百万ドル

10)Integration of nutrient and water recycling for sustainable algal biorefineries.

【概要】リン酸が豊富に含まれる排水を利用した安価な微細藻類培養技術、収穫技術、燃料への効率的な変換技術の開発を行うため、DOEから3百万ドルおよびNSF(National Science Fundation)から1百万ドルの支援を受けた。
【委託先】<大学>トレド大学*(中核機関)、モンタナ州立大学、ノースカロライナ大学 <企業>Advanced Algae Solution社
【期間】2013〜2016年
【費用】3百万ドル(DOE)、1百万ドル(NSF: National Science Fundation)

11)Major nutrient recycling for sustainable algal production.

【概要】培養から収穫、加工までの一貫プロセスを構築しながら、栄養源のコスト低下を目指す。窒素とリン酸のリサイクルに焦点を置き、酵素および微生物処理によって効率的な回収方法の検討を行う。
【委託先】<公的機関>Sandia National Laboratories*(中核機関)、Texas A&M Agrilife research <企業>Open Algae社
【期間】2013〜2016年
【費用】2百万ドル

12)Algae Testbed Public Private Partnership (ATP3)

【概要】微細藻類培養の基礎データを取るためのテストベッド(ATP3)の構築および運営を行う。ATP3は既存の屋外藻類栽培システムの運用を支援する藻類研究共同体の試験施設として機能する。研究者や技術開発者が高品質のテストベッド機能を利用できるようにすることで、新しい概念を大規模に迅速に貯めることができ、商業化に向けたデータ収集を大幅に加速することができる。
【委託先】<公的機関>National Renewable Energy Laboratory、Sandia National Laboratories、UTEX <大学>アリゾナ州立大学*(中核機関)、ジョージア工科大学、カリフォルニアポリテック州立大学 <企業>Cellana社、Touchstone Research Laboratory社、Florida Algae社、Commercial Algae Management社、Valicor Renewables社、Open Algae社
【期間】2013〜2018年
【費用】15百万ドル

13)Pt-based Bi-metallic Monolith Catalysts for Partial Upgrading of Microalgae Oil.

【概要】微細藻類由来の粗油をディーゼルへと3段階で変換する商業的に実行可能なプロセス構築を目指す。微細藻類から粗油を抽出したのち、金属および半金属で精製して前処理する。この独自の前精製方法がないと粗油中の高レベルの不純物が触媒を急速に失活させ、ディーゼルに変換することが難しい。最後のステップは、前処理された粗油に水素を加えて酸素を除去する。
【委託先】<大学>スティーブンス工科大学*(中核機関) <企業>Valicor Renewables社、BASF Catalysts社
【期間】2013〜2014年
【費用】0.65百万ドル

14)RAFT : Regional algal feedstock testbed partnership.

【概要】ATP3で長期間での培養データを取るためのコンソーシアム。生育速度について光、温度、塩濃度から特徴付けていく。このデータを踏まえ、テストベットでの収穫頻度モデリングを行う。3種類の藻類種を3箇所、3つの季節をまたいでとっていく。また、培地の再生と排水を用いた培養についても試す。
【委託先】<公的機関>Pacific Northwest National Laboratory、Texas A&M Agrilife Research <大学>アリゾナ大学*(中核機関)、ニューメキシコ州立大学
【期間】2013〜2017年
【費用】8百万ドル

15)An innovative pilot-scale biorefinery project related to production of hydrocarbon fuels meeting military specification.

【概要】アイオワ州にあるGreen Plains Renewable Energy、Inc.のエタノール工場と共同で、工場から得られる二酸化炭素、リグノセルロース糖および廃熱を使用した微細藻類生産システムの開発を行う。微細藻類バイオマスを先進的なドロップインバイオ燃料にコスト効率よく変換する技術の実証を目指す。
【委託先】<企業>BioProcess Algae社
【期間】2013〜2017年
【費用】6.4百万ドル

16)Biomass productivity technology advancement towards a commercially viable, integrated algal biomass production unit.

【概要】既存の製油所と互換性のある微細藻類燃料を生産するための新プロセスおよび藻類株の改良、培養改善による収量向上を狙う。また、栄養素のリサイクル、収穫、抽出、水熱処理の効率向上に向けた開発を進める。目標として2018年までに屋外で1エーカーあたり年間2,500ガロンの粗油生産を目指す。
【委託先】<企業>Sapphire Energy社
【期間】2013〜2016年
【費用】5百万ドル

17)Kauai-based biofuels energy project that will produce algae oil through a photosynthetic open pond system.

【概要】再生可能な二酸化炭素、リグノセルロース糖、廃熱を使用して軍事仕様に適合する炭化水素燃料を生産する革新的な微細藻類培養システムを検討する。主要製品は軍事用燃料になるが、施設では炭化水素以外に、グリセリン、動物飼料などの追加製品を共同生産する予定。
【委託先】<企業>Hawaii BioEnergy社
【期間】2013〜2015年
【費用】5百ドル

18)REAP : Realization of Algae Potential Algae Biomass Yield Program

【概要】ニューメキシコ州の地理的特徴を生かして、コスト削減のための年間を通した微細藻類の収穫と培養プロセスの開発を目指す。培養からドロップイン燃料までの各ステップの検討を行う。NAABBの一部の継続プロジェクトという位置付け。
【委託先】<公的機関> Los Alamos National Laboratory、Argonne National Laboratory、Pacific Northwest national laboratories <大学>ニューメキシコ州立大学*(中核機関)、ワシントン州立大学、ミシガン州立大学 <企業>Phycal社、Algenol Biofuels社、Pan Pacific Technologies社、UOP-Honeywell社
【期間】2013〜2016年
【費用】5百万ドル

19)Scale-up of algal biofuel production using waste nutrients.

【概要】微細藻類株の生産性を高め、2種類の異なる処理技術を比較する研究を行う。栄養源は排水からとり、CO2についてはバイオガスの排気を利用する。凝集剤を用いた沈殿技術の開発、細胞からの抽出技術の開発も進める。
【委託先】<公的機関>City of San Luis Obispo、California Energy Commission、ATP3 <大学>カリフォルニアポリテクニック州立大学*(中核機関) <企業>MicroBio Engineering社、Phitec社、LiveFuels社
【期間】2013〜2016年
【費用】1.5百万ドル

2014年度採択の助成金

20)Advancing commercialization of algal biofuels through increased biomass productivity and technical integration.

【概要】Nannochloropsis sp.の生産性及び油脂量を改良するために、品種改良、大量培養、脱水、の3つのカテゴリーでの開発を統合して進めていく。2018年までに1エーカーあたり年間2,500ガロンの燃料生産を目指す。
【委託先】<企業>Cellana社
【期間】2014〜2015年
【費用】3.5百万ドル

21)Development of Algal Biomass Yield Improvements in an Integrated Process Phase I.

【概要】3つのターゲットを決めて進めている。i) 微細藻類の品種改良を進め、既存の生産性から40%向上させる ii) 新規の収穫及び脱水技術を用いて既存の下流工程で使われているエネルギーを88%減少させる iii) 屋外培養による微細藻類生産での藻体バイオマスの販売価格をこれまでの価格の58%まで下げる。
【委託先】<公的機関>Pacific Northwest National Laboratory <大学>カリフォルニア州立大学、テキサスA&M大学 <企業>Kuehnle AgroSystems社、Global Algae Innovations社*(中核機関)、Hamilton Robotics社、TSD Management Associates社、General Electric社、Evodos社、Crown Iron works社
【期間】2014〜2016年
【費用】1百万ドル

次回part.2 では、2015年度採択以降(No.22~)の取り組みについて紹介する。

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