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バイオリアクター型の藻類生産施設”Algae Dome”

バイオリアクター型の藻類生産施設”Algae Dome”

先月デンマークで開催された現代アートの祭典CHART Art Fairにおいて、人気家具メーカーIKEAのラボSpace10がデザインした藻類生産施設”Algae Dome”が、コンテストの建築部門で受賞した。

IKEA’s Space10 creates algae-producing pavilion in Copenhagen

このSpace 10は、一昨年の11月にIKEAがデンマークの首都コペンハーゲンに設立した研究所で、デザイナーから研究者まで多様な人材が集まっている。これまで、持続可能な暮らしの実現を目的として、都市型農業・環境保全・ヘルスケアなど幅広い分野の研究開発を行い、未来の都市生活の形を探求してきた。その中でも代表的な作品が、高さ2.8メートル、幅2.5メートルの球状菜園”The Growroom“である。空間を有効活用した球形のデザインが特徴的なこの菜園は、スペースに制限のある都市を対象とした食料生産のソリューションの一つとして注目を集めている。
SPACE10 open sources The Growroom | SPACE10

今回受賞した”Algae Dome”も、同様に空間を最大限に活用した設備になっている。高さ4メートルの木材で作られた枠組みに約300メートルの透明なチューブを張り巡らせて微細藻類を培養する設備は、藻ディアでも度々取り上げているフォトバイオリアクターの構造である。

3日間の展示の中で、”Algae Dome”では計450リットルの微細藻類を産生することができた。

Space10の担当者は、今回の展示の目的は「藻類が持続可能な世界に貢献できることを、多くの人々に注目してもらうことであった」として、下記の様に語っている。

「我々が取り組んでいる問題の一つが、将来の食料探索と生産システムの改善だ。そして、栄養失調から気候変動まで、現在の世界が抱えている重要な課題を克服する鍵が藻類にあると考えている。」

「”Algae Dome”が備え付けられた住居を想像してみて欲しい。そこでは、酸素の供給だけではなく、生産されたスピルリナが住人の栄養補助食品にもなるのだ。」

ちなみに展示会では、微細藻類の魅力をより体感できるよう、来場者にはSpace10が開発したスピルリナ・チップスも用意してあった。試食した人の評判は上々だったそうだ。

現在は、まだ多くの人にとって微細藻類は馴染みのないものと思われるかもしれないが、今後”Algae Dome”のような設備が住居内に設置され、かつ藻類が食卓に並ぶというように、微細藻類が私たちの生活にとって身近なものになる日も遠くないだろう。

この記事を書いた人

台湾出身、2010年来日。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号を取得後、ちとせ研究所に入社。ライフサイエンスに幅広く興味を持ち、生物の力を最大化に生かし人類の生活・環境へ貢献できるように努力している。周りに影響されることなく自分軸のある人生を歩む、中国語、英語、日本語の三ヶ国語を操るトリリンガル。

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